事業者は計画地の選択をもっと慎重に
事業者は計画地の選択をもっと慎重にし、地域では自然環境の情報を共有し問題を未然に防ごう。
風力発電はこれまでとてもエコロジーなもの、というイメージが先行してきた。しかし風力発電を蕫二酸化炭素を出さない﨟という点だけから見ていると、この事業がもたらす自然環境への影響が見えにくくなってくる。タワー型の風力発電機1基ずつが立つ面積は限られているが、商業的に売電用として建設される大型の風力発電施設は、大きな面積の土木工事を伴い、完成したものは帯状の広大な面積と高さを占有する。
本来このような施設の建設は、ほかの大型の建設計画と同じく、国レベルの法律に基づく環境影響評価(法アセス)が必要なのである。現在は法アセスがないため、自治体レベルの条例やガイドラインなどでしか、その影響が検討される場がないのは大きな問題である。
また、事業者も真に環境に優しい事業にしたいならば、やらねばならないことがたくさんある。今回の特集を制作して、少なくとも3つの問題が明らかになったと思う。
まず第一に、風力発電施設の立地を考えるとき、どのように計画地を選び、どういう基準で決定しているか、その方法が不明確で不適切であること。そのため明らかに地域社会から反対の声が出ると予測できる地域や、社会的にその地域の自然の価値が検討されて保全することが分かっているような地域でも、計画地として選んでしまう。
第二に自主アセスメントの段階でも、その土地の自然や生物の資料や、地域のデータをたくさん持っている人々から情報を十分集めないまま影響評価をしようする計画が多いこと。短期間で簡易型の環境影響評価もどきで、影響評価手続きを済ませてしまうと、計画地の通年の自然特性をつかめず、結局何に影響を与えるか不明なままに計画を進行させることにつながる。そして、地域住民から自然への悪影響や災害の懸念を示される事態となってしまう。
第三に計画地の地域住民に対し、こうした懸念を取り除く努力をしようとしていないのではないか、ということ。影響評価が簡易型であることが多いので、調査結果に疑問が出されても十分応えられず、問題解決型でない対応が取られやすい。そのため、計画地の自治体に調査結果の非合理性や閉鎖性を指摘されると行き詰ってしまう。
これらの問題が連続して起きていると、風力発電事業に対する社会的な認識も変化していく可能性が高い。事業者はまず、計画地の選択時に、十分なリサーチと分析を行うべきである。例えば上の2つの地図を比較すると、自然環境の保全の一つの指標として公表されている、イヌワシの生息分布と、風力発電施設に好適な場とされる地域は、かなりの部分重なっていることが分かる。これらの地図を比較するだけでも、日本という国で風力発電施設の計画地を選択するのは、とても大変だということが見えてくる。地域でもこうした情報を多様な生物種で取りまとめ、地元自治体の計画に対する是非の判断材料として活用できるようにすれば、問題を未然に防ぐことにつながるはずだ。
(横山隆一・編集長)