「環境と調和のとれた食料システムの確立のための環境負荷低減事業活動の促進等に関する法律」の施行規則および基本方針に関するパブコメを提出しました
公益財団法人 日本自然保護協会(NACS-J)は、「環境負荷低減事業活動の促進及びその基盤の確立に関する基本的な方針(案)」 および「みどりの食料システム法施行規則第1条第1項の農林水産大臣が定める事業活動案の概要」に関する意見を農林水産省に提出しました。
意見の概要
環境負荷低減事業活動の促進及びその基盤の確立に関する基本的な方針(案)についての意見
みどりの食料システム法施行規則第1条第1項の農林水産大臣が定める事業活動案の概要への意見
・生物の多様性の保全その他の環境の保全に資する事業活動を独立した項目(6)とし、活動内容をより具体的に明示すべきである
提出したパブリックコメント
- 「環境負荷低減事業活動の促進及びその基盤の確立に関する基本的な方針(案)についての意見」(PDF/158KB)
- 「みどりの食料システム法施行規則第1条第1項の農林水産大臣が定める事業活動案の概要への意見」(PDF/110KB)
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2022年8月5日
農林水産省大臣官房環境バイオマス政策課
みどりの食料システム戦略グループ 御中
環境負荷低減事業活動の促進及びその基盤の確立に関する基本的な方針(案)についての意見
公益財団法人 日本自然保護協会
理事長 亀山 章
公益財団法人 日本自然保護協会は、「環境負荷低減事業活動の促進及びその基盤の確立に関する基本的な方針(案)」に対して以下の通り提言いたします。
記
意見1)環境負荷低減事業活動の促進の目標 KPI2030年目標(P2)に、「クロスコンプライアンス要件の拡充」の目標を追加すべきである
みどりの食料システム戦略P4~5に明記されている、「パリ協定やポスト2020生物多様性枠組への貢献を踏まえた、政策のグリーン化と、補助金の拡充、環境負荷軽減メニューの充実、これらとセットでのクロスコンプライアンス要件の充実」は、本戦略を確実に推進し、農林漁業に由来する環境への負荷を低減を実現するために重要な取組である。今回提示された基本的な方針では、化学農薬使用量、有機農業取組面積に対して、KPI2030年目標(P2)が設定されている一方で、「クロスコンプライアンス要件の充実」のKPIは設定されていない。農業の持続性確保のため、EUでは農家が補助金などのお金を受け取る条件として環境を保全する一定の行為が義務付けられる「クロスコンプライアンス」が設定されているのに対して、日本ではほとんど実施されず、環境負荷が懸念される補助金等が多数残されている現状がある。日本の農業の持続性確保のために、クロスコンプライアンスの設定を進めるとともに、その目標となるKPIの設定など、2030年に向けた進め方を明確にすべきである。
意見2)環境負荷低減事業活動の促進の目標 KPI2030年目標(P2)に、生物多様性保全を含む環境保全型農業の実施面積および、環境負荷低減事業活動に取り組んでいる農業者数に関する目標を追加すべきである
P2のKPIには、本法第3条の基本理念の中で、本法が取り組むべき課題として「生物多様性の低下」が定義されているが、これに対応するKPIが設定されていない。KPIとして測定可能なものとして、生物多様性保全を含む環境保全型農業の実施面積(多面法に基づく環境直接支払交付金の実施面積および、多面的機能支払交付金のうち生物多様性保全活動等の実施面積などを含む)があるので、この実施面積をKPIに追加すべきである。また、本法全体の効果測定として環境負荷低減事業活動に取り組んでいる農業者数の割合などもKPIとして設定すべきである。
意見3)3~5年後を目安に、KPIの進捗状況や基本方針の見直し等の点検を行うことを明記すべきである
基本方針について、本法第15条3項において「 基本方針は、有機農業の推進に関する法律(平成十八年法律第百十二号)第六条第一項に規定する基本方針並びに地球温暖化の防止を図るための施策及び生物の多様性の保全を図るための施策に関する国の計画との調和が保たれたものでなければならない」と定め、 第4項において「 農林水産大臣は、経済事情の変動その他情勢の推移により必要が生じたときは、基本方針を変更するものとする」と定めているものの、基本方針の見直しの時期は、基本方針(案)も含めて明確に記載されていない。そのため、3~5年後を目安にKPIの進捗状況や、地球温暖化防止、生物多様性保全の関連施策との調和状況について、基本方針の見直しも含めた点検を行うことを、この基本方針の中に追記すべきである。
意見4)温室効果ガスの排出の量の削減に資する事業活動(同項第2号)(P3)について、中干の実施方法について、配慮事項を追記すべきである
水田の中干は、メタンなど温室効果ガス発生抑制に効果がある一方で、水生生物の個体数が減少する等の悪影響が報告されている※1※2。温室効果ガス発生の抑制と生物多様性保全を両立するためには、「中干しの期間の後延長」※2、や「中干を実施する際に、生物の避難場所となる水辺(江)を水田内の一部に設置したり、ビオトープや中干を実施しない水田と隣接させること※1など、生物多様性の低下を防ぐこと」を推進する必要がある。そのため、P3に記載された「中干し期間の延長」は、「中干し期間の後延長(もしくは中干し時期に生物の避難場所となる「江」の設置)」に変更すべきである。
※1 農林水産省(2022) 令和3年度環境保全型農業効果調査委託事業 結果概要(P10)
https://www.maff.go.jp/j/seisan/kankyo/kakyou_chokubarai/attach/pdf/sansya_2_5-7.pdf
※2 片山直樹, 馬場友希, & 大久保悟. (2020). 水田の生物多様性に配慮した農法の保全効果:これまでの成果と将来の課題. 日本生態学会誌, 70(3), 201.
意見5)③農林水産省令で定める事業活動(同項第3号)(P3)について、新たな環境への負荷が生じることのないよう留意すべき事項として、「生物多様性への悪影響の防止」を追記すべきである
意見3で述べたように、農林水産省令で定める環境負荷低減事業活動の中には、「生物多様性への悪影響」が懸念される活動がある。そのため、③農林水産省令で定める事業活動(同項第3号)(P3)の中の新たな環境への負荷が生じることのないよう留意すべき事項として、「生物多様性への悪影響の防止」を追記すべきである。
以上
2022年8月5日
農林水産省大臣官房環境バイオマス政策課
みどりの食料システム戦略グループ 御中
みどりの食料システム法施行規則第1条第1項の農林水産大臣が定める事業活動案の概要への意見
公益財団法人 日本自然保護協会
理事長 亀山 章
公益財団法人 日本自然保護協会は、「みどりの食料システム法施行規則第1条第1項の農林水産大臣が定める事業活動案の概要」に対して以下の通り提言いたします。
記
生物の多様性の保全その他の環境の保全に資する事業活動を独立した項目(6)とし、活動内容をより具体的に明示すべきである
環境負荷低減事業活動の中に、「(5)生物の多様性の保全」(P1)が明記されたことは、評価できる。「生物の多様性の保全」の活動内容を明確にするために、生物の多様性の保全その他の環境の保全に資する事業活動を(6)として独立した項目とし、事業活動は、多面的機能支払交付金、もしくは環境直接支払交付金において生物多様性および環境保全に貢献する農法として設定している活動(ビオトープ、江の設置、土着天敵を活かすための生き物緩衝地帯の設置、夏期湛水または冬期湛水など)等を含むと、明記すべきである。
以上
みどりの食料システム法について
- 環境と調和のとれた食料システムの確立のための環境負荷低減事業活動の促進等に関する法律について
https://www.maff.go.jp/j/kanbo/kankyo/seisaku/midori/houritsu.html#syourei - 「環境と調和のとれた食料システムの確立のための環境負荷低減事業活動の促進等に関する法律」の施行規則および基本方針に関する意見・情報の募集について
https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=550003516
https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=550003515