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「環境と調和のとれた食料システムの確立のための環境負荷低減事業活動の促進等に関する法律施行規則案の概要」 にパブコメを提出しました

2022.05.28
要望・声明

公益財団法人 日本自然保護協会(NACS-J)は、「環境と調和のとれた食料システムの確立のための環境負荷低減事業活動の促進等に関する法律施行規則案の概要」に関する意見を農林水産省に提出しました。

意見の概要

・施行規則「Ⅱ-1環境負荷低減事業」として「生物多様性保全に資する事業」を追加すべき

提出したパブリックコメント

「環境と調和のとれた食料システムの確立のための環境負荷低減事業活動の促進等に関する法律施行規則案の概要」 への意見(PDF/150KB)


「環境と調和のとれた食料システムの確立のための環境負荷低減事業活動の促進等に関する法律施行規則案の概要」 への意見

意見:施行規則「Ⅱ-1環境負荷低減事業」として「生物多様性保全に資する事業」を追加すべき該当箇所:P1 「Ⅱ-1 環境負荷低減事業活動」

法律第2条第4項に「環境負荷低減事業活動」とは、「農林漁業に由来する環境への負荷の低減を図るために行う次に掲げる事業活動をいう」と定義している。その中では、第1号と第2号の事業活動をあげ、第3号に、前二号に掲げるもののほか、環境負荷の低減に資するものとして農林水産省令で定める事業活動、と書かれている。しかし、第1号は減農薬等の対策、第2号は温室効果ガス削減対策であり、これだけでは農地を生育・生息地とする動植物を保全し、生物多様性保全に資することは十分ではない※1。以上のことから、法第2条第4項第3号の農林水産省令で定める事業活動として、施行規則Ⅱ-1環境負荷低減事業活動として「生物多様性に資する事業」を追加し、税制優遇など、本法の支援対象とすべきである。

※1: 第1号の減農薬等の対策と、第2号の温室効果ガス削減対策の2つだけでは、農地における生物多様性保全が実現できない理由は、日本の水田を例にすると、以下の 2 つである。

理由①

水田における生物多様性に与える影響を 159 本の国内外の論文に基づきまとめた総説論文の結果から、水田における生物多様性の低下の主な原因は、化学農薬・肥料の使用、土地改良など集約的な農業、耕作放棄の3つとされている(katayama et al. 2015)。そのため、現行の法律(農薬減、温室効果ガス削減)では、化学農薬・肥料使用による生物多様性の低下は防げるものの、土地改良等で生じた生息地の分断や乾燥などの影響や、耕作放棄による影響は残ってしまい、生物多様性の低下に対して十分に対処できない。

理由②

減農薬等を含む、水田における生物多様性保全対策の効果について、日本全国 273 本の研究事例をまとめた結果から、農薬不使用・半減対策は、一部の分類群では生物多様性保全効果はあるものの、効果が認められない分類群があるなど、不完全であることが示されている。また、温室効果ガス削減対策の1つ中干しによって水田が乾燥すると、様々な水生動物の成長や生残に深刻な影響あること(片山ら 2020)が報告されている。

本件については、参議院質疑(2022/4/21)において、田名部匡代議員(立憲民主党)からの質問・提案に対して、農水省の担当審議官から「生物多様性の低下を招いている事象に対処する具体的な事業活動につきましては、省令での位置付けをしっかりと検討していきたいと思います※2」との答弁があり、農水大臣より「対応するように努力いたします※2」と答弁があった事項であり、省令(施行規則)での対応が求められている。

※2: 国会会議議事録(第 208 回国会 参議院 農林水産委員会 第 11 号 令和 4 年 4 月 21 日https://kokkai.ndl.go.jp/#/detail?minId=120815007X01120220421)より抜粋(019 番目の田名部匡代氏(立憲民主党議員)、020 および 022 番目の青山豊久氏(審議官)、024 番目の金子原二郎氏(大臣))

引用文献

  • 片山直樹, 馬場友希, & 大久保悟. (2020). 水田の生物多様性に配慮した農法の保全効果:これまでの成果と将来の課題. 日本生態学会誌, 70(3), 201.
  • Katayama, N., Baba, Y. G., Kusumoto, Y., & Tanaka, K. (2015). A review of post-war changes in rice farming and biodiversity in Japan. Agricultural Systems, 132, 73–84.


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