エコツーリズムで自然保護を進めるための見直し提言がまとまりました。
環境省が関係省庁をリードし、推進していく施策を提言
昨年11月、環境省の2011度のエコツーリズム総合推進事業費は、行政刷新会議の再仕分けで「予算計上見送り」と判定されました。これを受けて、今後のエコツーリズムのあり方と施策のつくり方を再検討するため、エコツアー実践者や研究者で構成する「エコツーリズム推進方策検討会」が環境省に設置され、NACS‐Jも参加しました。今年2月から6月まで4回開催され、7月に環境省に対する提言をまとめました。
仕分けで出た意見は、
●エコツーリズムに関する国民の認識はすでに高い
●全体的な戦略がまず必要
●地域の自主的取り組みを促す施策に集中すべき
●環境省は自然保護の普及に徹するべき
などで、もっともな指摘も多いものでした。
ただ、エコツアーという単語は知られてきていてもエコツーリズムという旅のシステムにはなりきらず、自然と社会への期待された効果をもたらしていない事例が少なくないことや(例えば、守るべき自然が見分けられているか、地域にガイドが育っているか、適切なお金の回り方と配分になったかなど)、現状では関係団体が全体計画をつくる段階でつまずいてしまった地域が多いこともあり、後は地域に任せれば自動的に進むというには程遠い状況があります。
検討会では、法律に基づいてつくられた「エコツーリズム推進基本方針」のビジョン(地域の再生、環境意識の醸成、持続可能な自然と社会の実現など)に照らし合わせ、環境省が行うべき施策の組み直し方を検討し、提言することになりました。
【重点をおくべき事柄】
提言の要点は、まず、今後の展開のために重点を置くべき事柄(方向性)に関して、
①エコツーリズムという考え方と目標像の共有や浸透に役立つこと
②地域でエコツーリズムを進めていくシステムを立ち上げることへの援助と、自律のためのしくみづくり
③海外観光客や日本在住の外国籍の人にアピールすること
④震災復興への支援につながること
と整理しました。
【政府に求める役割】
その上で、観光庁や農水省など政府全体に求める役割は、
■エコツーリズムのシステムを地域でつくり始めることへの支援
■概念の普及と目的の啓発
■関係する多くの主体の交流の場を設定すること
の3つに絞り込みました。ここまでは、ごく常識的な事柄かと思われます。
【環境省が実施すべき施策】
そして肝心の、環境省は何をすべきか。一番大事なのは、関係省庁をリードする立場をもっと意識すること。その上で次の5つの施策を実施すべきと提言しました。
①法律が目指す姿を実現させること→全体構想づくりのコーディネート
②始めたいと思うグループを増やすこと→立ち上げ時の資金援助やマニュアル提示
③見本となるツアーを国立公園でこそつくること→利用適正化のためのモデルづくり
④エコツーリストを生み出すこと→エコツーリズムを旅行者の視点から言語化し、広報する
⑤震災復興への貢献にもつながること→モニターツアーの実施など
これまでの取り組みは、大手の旅行会社や自治体という実施主体向けにエコツーリズムの概念を説明することばかりでしたが、旅行者一人ひとりに向け、その心理の分析を踏まえての解説は欠落していました。エコツーリストを生み出すことが入ったことは、前進だと思います。これらの提言から具体的にどのような施策がつくられるか、ご注目ください。
【参考】
検討会の提言、エコツーリズムに関する資料などは、下記ウェブサイトでご覧になれます。
http://www.env.go.jp/nature/ecotourism/try-ecotourism/