風力発電施設に係るアセスの基本的考え方に関する検討会報告書(案)に対し、意見を提出しました。
風力発電施設に係る環境影響評価の基本的考え方に関する検討会報告書(案)に対する意見(PDF/113KB)
風力発電施設に係る環境影響評価の基本的考え方に関する検討会報告書(案)に対する意見
2011年6月9日
公益財団法人日本自然保護協会
【意見1】 2-1 我が国の自然環境の状況(P2、25行~)
風力発電が積極的に導入されている欧州などの大陸と比較して、日本は気候・地形・生態系などが非常に多様という特異な環境によって豊かな生物多様性を有している。積極的に導入されている各国と異なり、我が国で導入が遅れている原因のひとつは、立地可能な環境に限りがあるからである。脆弱な環境にしか立地できない我が国で積極に導入する場合に、自然環境への影響が、海外とは異なり生物多様性保全上のリスクになることの認識が不可欠である。したがって、
「風力発電所は、山地の尾根や海岸等の脆弱な環境に立地されることが多いことから、このような我が国の自然環境の特性を十分に考慮する必要がある。」の部分は、次のような修文する必要がある。
「風力発電所は、積極的に導入されている各国と異なり、我が国では山地の尾根や海岸等に立地されることが多い。このような自然環境は非常に脆弱であり、生物多様性保全上のリスクを十分に考慮する必要がある。」
【意見2】 2-2 地球温暖化対策・エネルギー政策との関係(P3、9~25行)
地球温暖化対策に加え東日本大震災を受け、現状のエネルギー政策の見直しは当然である。また、環境影響評価は、風力発電を我が国へ導入するにあたってのリスクを受益者でもある一般市民とともに検討する場になるべきである。事業者による手続の透明性の確保だけでなく、適切なアセス制度の実施によって影響の回避・低減、社会合意を図ることが推進されるべきである。したがって、
「このような昨今の再生可能エネルギーに対する需要と関心の高まりに対応するため、今後の風力発電所の設置に当たっては、風力発電事業者が透明性の高い環境影響評価の手続を適切に実施し、より環境の保全に配慮した事業の実施の確保を図ることで、再生可能エネルギーの導入促進や地球温暖化対策を推進していくことが重要である。」の部分は、次のような修文する必要がある。
「このような昨今の再生可能エネルギーに対する需要と関心の高まりに対応するため、今後の風力発電所の設置に当たっては、風力発電事業を我が国に導入する場合の自然環境へのリスクを環境影響評価によって十分に検討し、自然環境破壊との引き替えにせずに再生可能エネルギーの導入促進や地球温暖化対策を推進していくことが重要である。」
【意見3】 法対象事業のカバー率との関係(P12、3行~)
風力発電事業の規模要件の水準1~3万kW ごとの比較を整理されているが、カバー率(出力ベース)が2万kWであっても54%と、他の発電事業(84~100%)とかけ離れている。規模要件は低くし多くの風力発電を法の対象とすべきである。
【意見4】 規模要件について(P12、21~27行)
日本自然保護協会は検討会ヒアリングなどで「5000kW以上とする」ことを提案し、検討会専門家からも「1万kWが適当」という意見が多く占めた。2万kW以上では、改変面積が倍増するだけでなく対象事業も3割減るため、規模要件を高める余地はない。
【意見5】 規模要件について(P12、21~27行)
「再生可能エネルギーを速やかに導入するために(略)効率的・効果的かつ適切な環境影響評価を実施」という一文が入っているが、規模要件とは切り離すべき内容であり、文意は「9.おわり」にも掲載されているため、ここでは削除すべきである。
【意見6】 規模要件について(P12、21~27行)
条例アセスでは限定的であり、自主アセスでは野鳥衝突をはじめ自然保護上の問題は解決しない。単位面積とワット数の比で考えると改変面積が大きい発電事業であること、小規模な出力でも野鳥の衝突死の事例があることから5,000kW以上を対象とすべきである。
【意見7】 地域特性に基づく規模要件等(P13、5~32行)
日本自然保護協会では、生物多様性上重要な地域は回避、その隣接地への計画は規模に関わらず対象とする、地域の特性に応じた手法を取り入れることを提案してきた。条例や既存の保護地域制度の枠にとどまらず、広くとらえる必要がある。
【意見8】 6-1環境影響評価の対象範囲(P17、7~15行)
他の発電事業の事業実施区域には、「取付道路や土捨て場」が含まれているにも関わらず、風力発電のNEDOマニュアルでは含まれていなかったことは、環境への影響を過小評価することにつながっている。対象範囲は広範にとらえるべきである。
【意見9】 8-1隣接する風力発電設備について(P24、16~22行)
大規模なウィンドファームの場合に、計画や事業主体を分けて、個別段階的に建設され、結果的に累積的な環境影響を及ぼすことが問題となる。法アセスの対象化とともに、このような適地とされた環境への累積的な影響は回避されなければならない。
【意見10】 8-4送電線の取扱いについて(P25、9~16行)
風力発電施設に付帯する送電鉄塔やその経路も環境改変なのだから、条例アセスでの対応に期待するのではなく、電気事業法上の枠組みを見直し、必要な自然環境においては法アセスによって環境影響の対象範囲とすべきである。
【意見11】 8 今後の課題(P24、12行~)
アセス法改正によって、日本版戦略的アセスメントとして「配慮書」の手続きが導入される。風力発電においても位置規模を検討するプロセスとして重要なため、「今後の課題」に「配慮書」の対応を盛り込む必要がある。
【意見12】 おわりに(P26、1行~)
再生可能エネルギーとしての期待が高まる風力発電は、「環境への負荷を低減させ、持続可能な社会の実現を図るシステム」である環境影響評価を通じて、日本の地域社会に合意を図っていくことが、各地の風力発電問題からもいっそう求められる。
以上
ご参考:環境影響評価情報支援ネットワーク(環境省)
「風力発電施設に係る環境影響評価の基本的考え方に関する検討会」報告書の取りまとめ及び報告書(案)対する意見募集(パブリックコメント)の結果について(お知らせ)