愛知ターゲットの今後の動向に関する解説 (2011.06.08)
1.国際的な動向
愛知ターゲット(正式名称:生物多様性条約戦略計画2011-2020)は、複数のレベルで検証が行われている。
1‐1 CBD全体
愛知ターゲットの解説(解釈technical rationaleと呼ばれる)・マイルストーン・指標(案)をCOP11で正式に確定する見込み。合わせて、個別目標20(資金拡大)に関する資金拡大の目標値の設定が大きな焦点になりうる。合意形成のプロセス(会議)は、以下の通り。
<2011年>
・6月20-21@UK 戦略計画の指標に関する専門家会合(AH-TEG)
GEO-BONNによる検証や、都市と生物多様性に関するシンガポールインデックス等を踏まえ、提言をまとめる。
・11月7-11@モントリオール 第15回科学技術助言補助機関会合 15th SBSTTA
AH-TEGの提言を受けて再度検討。COP11への提言をまとめる(または、第4回条約の実施とレビューに関する作業部会(4th WGRI)に送る)
<2012年>
・5月7-11@モントリオール 第4回条約の実施とレビューに関する作業部会(4th WGRI)
指標に関する専門会議(AH-TEG)とSBSTTAの検証を受けて、COP11への提言をまとめる。
道家コメント:特に、COP10にて先送りされた個別目標20(資金の拡大)に関する資金拡大の目標値について大きな焦点になるかもしれない。
・10月8-19@ハイデラバッド・インド COP11
COP11にて正式にマイルストーンなどが採択される。
1‐2 各国・地域レベル(日本を除く)
2010年から2011年にかけて条約事務局では、国家戦略の見直しに関する地域ワークショップを開催し、各国の国家戦略担当官による会合を行っている。
<主な地域と開催地>
中央アフリカ@コンゴ、東アフリカ@ルワンダ、南アフリカ@エクアドル、不明@スイス、西アフリカ@セネガル、東・南・東南アジア@中国、北アフリカ中近東@レバノン、ヨーロッパ@ドイツ、
地域レベルで取り組みが動き出している事例も存在する。
・EUでは、すでに愛知ターゲットを踏まえた2020年までの目標が採択されている。
>>EU:Biodiversity Targets for 2020
・ブラジルでは、「生物多様性対話:2020年に向けたブラジル戦略の構築」と題する活動を環境省・WWFブラジル・IUCNと共同で行っている。
1‐3 IUCNの動向
IUCNでは、愛知ターゲットを強く意識した4カ年計画(2013-2016)を準備中。
The Draft IUCN Programme 2013-2016(PDF/545KB)
本4カ年計画(およびIUCNの将来の活動)は、IUCN地域自然保護フォーラム(アジア版は2011年9月27-30日 韓国・インチョンに実施)でのコメントを踏まえ、第5回世界自然保護会議(2012年9月 韓国・済州島)にて採択予定。
2.日本の動向
2‐1 環境省・生物多様性国家戦略2012
<2011年>
環境省は、CBD-COP10を踏まえた生物多様性国家戦略2010の改定を準備している。
2011年6月から計6回程度、環境省中心に懇談会を開催し大所高所の観点から検討を行い、とりまとめる予定。懇談会のプロセスにNGOヒアリングは入っていないと聞いている。
同時並行で、地方環境事務所を中心に8か所で座談会を実施し、地域の意見をくみとるプロセスを検討している。
<2012年>
具体的な本文の検討は、中央環境審議会・野生生物自然公園合同部会にて行われる。諮問を2012年1月に行い、2012年9月には答申をまとめ、閣議決定する予定となっている。検討の過程でNGOヒアリングが入っている(どのNGO が招致されるかは不明)。また、地方説明会の予定も入っている。
内容について。愛知ターゲットへの対応を大前提とした国家戦略を検討することになると予想されるが、見通しは不透明。NGOの監視・政策提言がなければ、個別目標毎に取り組み状況にでこぼこが出ることが考えられる(例えば、【個別目標3】生物多様性に悪影響を及ぼす補助金の廃止・改善など)。また、獣害対策など、愛知ターゲットにはないが、日本にとっての大きな課題をどう扱うかは不明。
2‐2 日本のNGOの動き
現在、日本のNGOで統一した動きをするところはない。「国連生物多様性の10年市民ネットワーク」が設立され、今後参加団体で協議を行い、10月に正式な活動計画を決める予定となっている。
日本自然保護協会では、生物多様性の道プロジェクトのもとアドバイザリー会議で国家戦略への取り組みを検討する予定。
また、IUCN-Jでは、海外情報収集と報告会を準備しており、2011年はIUCNアジア地域自然保護フォーラム(1‐3参照)、CBD-15th SBSTTA(1‐1参照)を調査対象とする。なお、SBSTTAは条約事務局のある都市で開催されるため、条約事務局との面談・ヒアリングも予定している。
(文責:保全研究部・道家哲平)