生物多様性条約・伝統的知識の保護作業部会に参加しました。
生物多様性の保全やその恵みの利用、維持を考える上で、衣食住などさまざまな場面で培われてきた、地域社会が持つ自然に対する伝統的知識が欠かせません。世界では今、地域ごとの伝統的知識が失われつつあることや、先進国や企業によって地域に無断で伝統的知識が商業利用されることが問題視されています。
生物多様性条約には、伝統的知識などの保護を進める条項(8条(j)項)が定められており、先住民族や専門家、政府が集まる作業部会で議論が進められてきました。2009年11月、カナダ・モントリオールにて、この作業部会に参加し、情報収集を行いました。
今回の作業部会では、生物多様性条約における合意形成過程への先住民族の参加のしくみや、伝統的知識の保護を進めるための作業計画(改訂版)などの決議文案(最終的な決定はCOP10で行う)が決まりました。その中には、先住民族や地域コミュニティが守ってきた土地を、生物多様性保全上重要なものと定め、その面積やそれぞれの地域の保全の状態を、ポスト2010年目標と呼ばれる条約全体目標の進捗を図る指標にするという案も盛り込まれています。
生物多様性がもたらす自然の恵みを守ってきた地域コミュニティについて、NACS-Jも、「生物多様性の道プロジェクト」「人と自然のふれあい調査」などでその保全に取り組んだり、会報の「くらしと自然のつながり再発見!」でその大切さを紹介してきました。これらのプロジェクトを通じ、今後も伝統的知識を生かした地域づくりに取り組んでいきます。
▲ 南アフリカの先住民族が利用していたフーディアという植物からつくられた食欲を
抑制する健康食品。フーディアから多くの商品がつくられているが、先住民族に利益が
還元されていない。