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「点検結果」とは呼べない報告を基に点検及び事業の成果を検証することは不可能

1999.07.16
要望・声明

1999年7月16日

生物多様性国家戦略 第3回点検結果に関する意見

(財)日本自然保護協会

国家戦略全体について

1.過去2回の点検結果に関しても、自然保護NGOとして意見を述べてきたが、意見に対してどのような取り組みが成されたのかが全く明らかになっていない。意見に対してどのように対処したのか、公表すべきである。

2.意見を反映させる仕組みが明らかにならないのでは、このような意見を提出しようとする意欲を失わせる。第2回の点検結果には、わずか5団体と個人から36点の意見が寄せられただけであった。そのうち10点は当協会からの意見である。本気で国民から意見を聞こうとしているのか疑問を持たざるを得ない。

3.「国家戦略」に基づいて行われた施策の概要が報告されているが、相変わらず各省庁の事業を羅列しただけである(実施主体さえ記載されていない)。生物多様性保全のどのような課題に対応するため、どの省庁が連携してその事業を実施し、どのような成果があったのか。まだ対応できていない点は何か等、目標に対する達成状況とこれからの課題、課題に対応するために必要な省庁の連携、取り組みの見通しなど点検と呼べる具体的な記載がない。 

このような「点検結果」とは呼べない報告を基に点検及び事業の成果を検証することは不可能である。

『生物多様性保全のどのような課題に対応するため、どの省庁が連携してその事業を実施し、どのような成果があったのか。まだ対応できていない点は何か等、目標に対する達成状況とこれからの課題、課題に対応するために必要な省庁の連携、取り組みの見通しなど具体的な記載』をすべきである。

4.生物多様性保全上、緊急な対応が必要な課題は数多くあるが、その中でも特に以下の項目については、各省庁の連携のもと、緊急に取り組む必要がある。

 

干潟・浅瀬生態系の保護

三番瀬、小櫃川河口干潟、吉野川河口干潟、和白干潟等現存する干潟・浅瀬の保護およびそこで国・自治体が計画している開発事業の根本的見直し。特に、埋立ての制限、許認可のあり方の見直し。諫早干潟等生態系破壊が進んでいる干潟について、開発事業の見直しと干潟生態系の回復。

野生生物保護

鳥獣保護法が1999年6月に改正されたが、農林業被害への対処と地方分権への対処というわずかな修正にとどまっている。単なる個体数調整による野生動物の保護管理だけでなく、被害防除や生息地管理を盛り込んだ保護管理制度の確立と野生生物全体の保護を目的とした法制度の確立。

里やま自然の保護

愛知県海上の森等、伝統的な農林業と結びついて維持されてきた二次林を含む里やま自然の保護およびそこで国・自治体が計画している開発事業の根本的見直し。都市計画、農業政策、税制等における里やまの保全対策の検討、実施。

海辺の自然の保護

海岸法改正に伴う、国による「海岸保全基本方針」、都道府県による「海岸保全基本計画」の策定において、早い段階から内容を公表し、国民、自然保護団体、専門家等から意見を集めるしくみを作ること。

河川生態系の保護

河川法を改正し、環境を河川行政の大きな柱にし、多自然型川づくり事業が行われるようになったが、川辺川ダム、吉野川可動堰の建設や長良川河口堰の運用などそれ以前に計画された大規模公共事業は、十分なチェックもされずそのまま継続され、生物多様性を脅かしている。これら事業の根本的見直し。

以上

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