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資料集その6 旅行企画者およびツアーコンダクターのガイドライン

1994.08.01
解説

1.「自然に親しむ旅行」から「自然保護につながる旅行」にしてゆく目的意識を持つ
「自然に親しむ旅行」から、参加者が旅行を通じて、「自然保護への気持ち」を育むような旅行にするにはどうしたらいいか。それには旅行企画者(旅行会社や企画団体)の自覚と添乗員や現地ガイドによる環境教育が重要な意味をもつ。旅行企画者は、企画団体から「自然保護につながる旅行」とする目的意識を持つと同時に自然保護に理解があり、環境教育ができる力をもったガイドをツアーに 同行させるようにしたい。

2.エコツーリズムの受け入れ体制が整った目的地を選ぶ
旅行会社・企画団体はまずエコツーリズムの対象としても良い場所かどうか、考える必要がある。昨今では従来の観光地巡りに飽きた人が、秘境といわれる自然の豊かな場所に好んで行く傾向がある。そのため旅行会社もそのニーズにあったツアーを組むようになっているが、自然保護上あえてツアーを組まない方が良い場所もあるはずである。

エコツアーを意識して十分考慮されたツアーであっても、利用よりも保護を優先させる地域や受け入れ体制がある程度整っていない場所へは、ツアーを組むのは控えるべきであろう。

3.企画段階で、地域に詳しい研究者や自然保護団体の意見を取り入れる
エコツアーには、旅行者が野生生物に与えるインパクトなど、旅行会社や企画団体が気づかない重要事項や、注意を払わなければならないことが多い。事前に、地域に詳しい研究者や自然保護団体の意見を求め、その意見を尊重すべきである。

4.団体旅行の場合は、募集人員20名以下を基本とする
デリケートな地域に入ることが多いエコツアーにおいては、従来の観光旅行のような30名~40名の団体は自然へのインパクトがかなり大きくなる。人数を 20名以下とすることにより、ツアーガイドの声は全員に行き渡るであろうし、参加者同志のミーティングでも全員顔と名前を覚えることができる。このことにより、エコツアー参加者は、自然や文化に触れるだけではなく、参加者同士のふれあいを楽しむことができる。ツアーを通して環境教育をする場合でも20名以下なら、主催者の意図することも全員に伝わるのではないだろうか。

5.参加者に事前のオリエンテーションを実施する
ツアーの出発前(どうしても不可能である場合には、初日の宿での夕食後等)に、ツアーの主旨や内容を紹介する機会を設ける。特に地元の人たち、自然保護関係者と懇談する時間を設けることが望ましい。ある地域に出かけて「見た、感動した」で終わらず、考える場を設けることもエコツアーには必要である。地元にはさまざまな立場の人間がいるので、多角的にその地域の自然や文化を考える事もできる。

6.エコツーリズムの主旨を理解した添乗員を養成する
現地ガイドは現地のみ、しかも決められた時間での契約である場合が多い。集合場所から解散場所まで宿泊や食事を含め、もっとも参加者に近い関係にいるのが添乗員であろう。それゆえに、エコツアーの添乗員はエコツーリズムの主旨を理解し、参加者を啓蒙する立場にあるといえよう。添乗員は参加者に対し、最低限のマナー〔「とって良いのは写真だけ、残して良いのは足跡だけ(できれば足跡も残さない)」〕また、喫煙者は携帯灰皿持参等)を指導することも必要である。添乗員はその地域の自然と文化に強い関心を持ち、『エコツアーの添乗員』であることを自覚する必要がある。

7.その地域の自然と文化を熟知した地元のガイドを手配する
旅行会社の添乗員が、全世界に均等に精通することは難しい。また添乗専門の派遣会社の添乗員でも、これから開拓される「エコツアー」に関しては戸惑う点も多いのではないだろうか。そこで「エコツアー」には添乗員以外に、その地域の自然と文化を熟知した地元のガイドをつけることを原則としたい。プロのツアーガイドのシステムがない場合は、地元で自然保護に携わっている人、NGOの関係者をガイドとして起用してはどうだろう。できれば皆に分かり易く、楽しく案内してくれる人が望ましい(エコツアーは調査・研究ばかりではなく、旅行を楽しみながら自然保護を理解しよう、という参加者もいるはずだから)。旅行会社は地域の自然、文化に精通したガイドが地元に育つよう協力しなければならない。

8.地元経営の宿を選び、地元産のみやげを推奨する
地元への経済的メリットを考える必要がある。地元経営の宿を利用し、自然に悪影響のない地元産の土産を参加者に薦める(添乗員が一言薦めた土産を参加者は選ぶ傾向にある)。

9.地元の人々とのコミュニケーションをはかる
地元の人にも自然保護に関心をもってもらえるようにする。意識して「ここに自然が残っているから来たのです」と空港職員、駅員、タクシー運転手、土産物屋、宿屋に説明する。そのことで、あえて大きな観光施設を作らなくても人は来る、金も落ちると思ってもらい、地元の人に地元の自然の価値を見直してもらう。参加者の口から自然に出るのが効果的だが、現実には気付かない人も多いのでガイド、添乗員が参加者にヒントを与えることも必要である。

10.参加者や地元からのツアーの評価をフィールドバックする
旅行終了後、参加者や地元からのツアーの感想や意見を収集し、自己評価する。ツアーという同じ時を過ごした人でも、とらえかたはさまざまであろうし、他の人の意見や感想を知ることは大切である。また、地域の人々や自然保護団体等が見てツアーがどう評価されたかを知り、次のツアーにフィードバックすることが重要である。

→ 宿泊施設のガイドライン

 

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