資料集その3 ガイドライン作成の目的
エコツーリズムの定義・ガイドラインを検討するため、これまでもさまざまな試みが行われてきた。その一つは、旅行関係団体によるものであり、エコツーリズム協会、国際旅行協会、サファリワールド協会、第三世界旅行協会などさまざまな団体が、旅行者に対するガイドライン、旅行業者みずからが守るべきガイドラインを出している。わが国においても、1993年、日本旅行業協会(JATA)が「地球にやさしい旅人宣言」を発表している。これらは、既成のツーリズムへの反省から、少しでも自然への負担の少ないツーリズムへと転換しようとするツーリズムの内部努力である。一方、IUCN(国際自然保護連合)をはじめとする自然保護団体から出されたガイドラインは、自然保護地域を不用意な観光開発から保護するため、教育的な意味をもったあるいは特に開発途上国の保護地域に経済的なメリットをもたらすものとして、エコツーリズムをとらえている。
NACS-Jは、自然保護団体という立場から、エコツーリズム本来の主旨を再確認し、エコツーリズムの定義およびエコツーリズムに関係するすべての人々が具体的に行動をはじめるための指針をまとめるとともに、エコツーリズム推進に責任をもつ関係機関に対する提言を行うことを目的として、NACS-Jエコツーリズムガイドラインの検討を行った。なお、検討に際しては、国内エコツーリズム、海外エコツーリズム、保護地域内外の別は問わず、エコツーリズムの範囲を広くとらえることとした。
エコツーリズムの実現には、研究者、教育者、保護地域の管理者、旅行業者(主催者および企画団体)、添乗員、現地ガイド、エコツーリストなど、さまざまな分野の協力が必要となるため、各分野の専門家を委員に委嘱し、1994年2月にエコツーリズムガイドライン検討委員会を開催し、各委員が分担して執筆したガイドラインをもとに検討を行った。その成果が以下に示す「NACS-Jエコツーリズムガイドライン」で、(1)エコツーリズムの定義、(2)ガイドライン及び提言、(3)ガイドライン・自己診断ガイドの3つからなっている。