普天間飛行場代替施設建設事業に係る公有水面埋立承認の撤回についての再度の要望
普天間飛行場代替施設建設事業に係る公有水面埋立承認の撤回についての再度の要望(PDF/415KB)
2017年12月28日
沖縄県知事 翁長 雄志 様
公益財団法人 日本自然保護協会
理事長 亀山 章
普天間飛行場代替施設建設事業に係る公有水面埋立承認の撤回についての再度の要望
米軍普天間飛行場代替施設建設事業の公有水面埋立承認の撤回の時期が来年11月以降になる可能性について報じられている。日本自然保護協会は、生物多様性豊かな自然環境の保全に取り組んでいる立場から、事業実施地の現状を伝え、以下の事項を要望する。
日本政府は、今週にも、K4護岸の建設に着工すると報じられている。これまでにキャンプ・シュワブの南側にてK1とN5と呼ばれる二つの護岸造成工事が行われており、N5の延長となるK4は、これまで着手した護岸工事で最長の約1キロである。これらの護岸工事が進行すれば大きな海草藻場の喪失となる。日本自然保護協会が指摘してきたよう、埋め立て工事の影響は直接の改変地に及ぶだけではない。工事による改変地の周辺にも影響は及ぶことが予測される。
2014年の夏にジュゴンの個体Cが好んで利用していた大浦湾西部に位置する海草藻場はK9護岸の建設により失われている。今ある海草藻場の保全をすることがよりいっそう重要である。
また、国頭村奥港および本部町本部港から辺野古へ同事業に用いる石材の積み出しと搬入が海上にて開始されている。これまでに指摘してきたように(日本自然保護協会、2017)、この海上はジュゴンが移動するルートや、餌場として用いている海草藻場の至近距離に位置する。
さらに、3,800mの浮具とそれらを固定するためのコンクリートブロック79個がこれから海に沈められようとしている。これらの作業が完了すると、これまでに海に投入されたものと併せ、合計500個以上のコンクリートブロックが海に沈められることになる。環境への影響は予測されていないものの、同海域の生物多様性の豊かさを支える海底の地形の多様さが失われて均一化し、海流や地形にも変化が生じ、泥地や砂場などに生息する生物の生息地が消失するなどの影響が及ぶ可能性が高い。
沖縄防衛局が11月に実施した幼サンゴ加入調査の結果、人工着床具に14か所のうち1か所にしか着床が確認できなかった(琉球新報、12月26日)と報じられている。これまで複数個所に着底が見られた幼サンゴ群体の数が1か所に減ったということをもって直ちに工事の影響であるということはできないが、この海域のサンゴ礁を取り巻く状況の劣化を示唆すると考えられる。
加えて2016年、2017年と2年連続して、沖縄では主に気候変動の影響によりサンゴの死滅が多く記録されている。事業実施地も例外ではなく、日本自然保護協会が今月行った調査では、白化や病気などの影響を受けてサンゴの被度が大きく下がった場所も確認されている。
ジュゴンの保護策として有識者によりジュゴンの移入が提案されているものの、これ以上工事が進んだ場合にはジュゴンが生息できる環境が失われ、沖縄のジュゴンの存続が難しくなる。この事実は、米国で行われているジュゴン訴訟の判決にも影響する。
以上のことからこれ以上工事が進むことにより環境への影響は甚大となることは明確であり、早期に対応が不可欠である。ジュゴン生息域近くを通過する海上搬入を行うこと、環境に影響が及ぶコンクリートブロック等を用いて工事を進めることは、公有水面埋め立て承認の際に付された留意事項に反する。
来年は国際サンゴ礁年であり、沖縄島は世界自然遺産への登録が期待されている。国際社会にふさわしい保全ができるよう、特に沖縄県には沖縄の大切な財産である辺野古・大浦湾のサンゴ礁を大切にしていただきたいと強く願っている。そのためには工事をただちに停止させることが必要であり、早急に奥港および本部港の利用許可を取り消すこと、および公有水面埋立承認の撤回を要望する。