尾瀬・至仏山の雪田植生保護対策が、次の段階へと入りました。
尾瀬国立公園にある、蛇紋岩地域特有のお花畑の存在で有名な至仏山。特別保護地区の登山道のあり方に伴う植生かく乱と喪失を止める試みが続いています。
2003年、至仏山保全緊急対策会議が「至仏山保全対策基本方針」を策定してからすでに12年もの年月が経ちました。この間、NACS-Jが受託した環境共生推進計画調査によって2007年に「至仏山保全基本計画」が策定され、登山道の部分的迂回による解決が提案されました。
その場所の環境負荷の最小化と新しい工法の歩行路のあり方は、2009年から4年間にわたり地生態、植生、水理、自然保護の専門委員会によって検討されました。この報告書が、ようやく今年3月にまとまりました(編集:NACS-J、製本:尾瀬保護財団)。
成果の一部である残雪地の新歩行路のデザインと発想の転換の必要性は、会報2015年1・2月号20ページで紹介したところです。対象3区間の登山道が現在の区間を通っている限り環境のかく乱問題は解決しないため、至仏山頂東面直下、小至仏山南、オヤマ沢田代の三カ所を迂回させるルートの実現を前提に、環境負荷を最小化する新歩行路を取り入れる試験段階に入ることになりました。
技術的問題とは異なる最も大きな問題は、事業者(費用負担者)が定まっていないこと。これについて、NACS-Jは、新歩行路の実証試験は国に、迂回と植生再生の実行役は問題区間のこれまでの登山木道敷設管理者である東京電力と群馬県の協議で決定するよう提案しました。
(参与 横山隆一)