世界自然遺産小笠原のオーバーユース対策を進めています。
2011年6月に世界自然遺産に登録された小笠原諸島では、観光客が倍増し、利用が集中する場所が出てきました。
NACS-Jでは登録前から、観光利用により自然環境が劣化することを防ぐために、自然度や脆弱性に合わせた利用のあり方を整理する提案をしてきました。
その提案が実現し、昨年度、林野庁による、「森林生態系の保全と利用に関する調査」および「新たな外来種等の予防対策調査」が実施されました。
森林生態系保護地域としては同じ保全地域でも、その自然度や人為への脆弱性は異なります。小笠原の場合は、自然度が高いほど、人為や外来種への脆弱性も高くなります。
しかし現状では、ガイド同伴という決まりはあるものの、環境の脆弱性の違いに応じた利用の区別はありません。これでは、外来種の移動や観光利用のコントロールはできません。入り口、バッファー(影響を緩和する区域)、コア(しっかりと保全する区域)にゾーニングを整理しなおし、観光利用の動線をコントロールしつつ保全をする必要があります。
今回の調査では、以前NACS-Jが作成した環境区分図も考慮された上で、バッファーに該当する区域の抽出が検討され、父島では夜明平、母島では桑の木山がバッファーの候補地として選定されました。NACS-Jでは今後、詳細な設計にも具体的な提案を行い、小笠原のオーバーユース対策が進むよう働きかけていきます。
※森林生態系保護地域は本来、利用を前提としていないが、小笠原の場合は実態に合わせ利用できるルートを決めた。
(保護プロジェクト部・辻村千尋)