ラムサール条約湿地「中池見湿地」に北陸新幹線の路線計画が浮上!
中池見湿地(福井県)は都市近郊にありながら約3000種もの動植物が生息する湿地で、モニ1000里地調査のコアサイトにもなっています。市民活動の成果により2011年度に越前加賀海岸国定公園に編入され、今年7月には中池見湿地が世界にその価値が認められラムサール条約に登録されたばかりです(会報529号参照)。しかし、その直後の8月末、中池見湿地の中でも希少種が多く集まる下流の谷に北陸新幹線を通すという計画が発表されました。
現状の計画はトンネルが山腹を通過し、谷部分もトンネルのまま地面に沿って横断するというものです。この計画では湿地の動植物の生息地地は破壊され、生物の移動経路も分断されてしまいます。また山腹でのトンネル工事により湿地の命でもある湧水への影響も懸念されます。事業者である鉄道・運輸機構は地元説明会で中池見湿地の路線計画について「調査はするがルートの変更はない」と明言しています。中池見湿地はラムサール条約湿地となり、将来にわたって湿地を大切に保全していくことを世界に向けて約束したばかりです。現地では市が中心となって地元団体やNACS-Jとともに保全管理に向けた協議会の準備会合を進めています。中池見湿地の開発は日本だけでなく世界にとっても重要な問題です。
(右図:8月に発表された中池見湿地を通り抜ける北陸新幹線の予定ルート(オレンジ線)。10年前の環境影響評価書から150mほど内側へ変更された。※国土地理院基盤地図情報をもとに作図)
NACS-Jは環境省や国交省・地元行政にルート変更に向けて働きかけをするほか、ラムサール条約事務局のアジア・オセアニア担当官と協力して課題解決に向けて動き出しています。現状の中池見湿地の路線計画を変更するためには世論を盛り上げていくことが不可欠です。今後も随時進捗を報告していきます。
(福田真由子/保全研究部)