AKAYAプロジェクトは、 新たな10年間の協定による活動を始めました。
会報『自然保護』No.522(2011年7・8月号)より転載
1万haという広大な国有林を、地域協議会、林野庁、NACS‐Jの3者協働で管理する「三国山地/赤谷川・生物多様性復元計画(通称:AKAYAプロジェクト)」は、今年3月で7年間が経過し、最初の協定期間を終了しました。4月からは、新たに10年間の協定を締結し、大きな節目となりました。昨年度6回にわたって、7年前に目指したこと、7年間の成果、今後の課題と将来像について議論を行いました。
本プロジェクトでは、国民の森である国有林のあるべき管理の姿として、前述の3者に加え関東一円から集まるボランティア(AKAYAプロジェクト・サポーター)の方々とともにモニタリングを行い、自然環境モニタリング会議で科学的な知見をつくってきました。その成果と、森にかかわるさまざまな情報を共有し、4者が参加できるプロセスで保全管理を行ってきました。実際の管理方法や運営の仕方についてはまだ改善の余地がある状況ですが、科学的な知見に基づき、多様な主体が参加して保全管理する体制と枠組の基盤は確立できたと考えています。
また、プロジェクトには大きな2つの目標、「生物多様性の復元」と「持続的な地域づくり」があります。まず、「生物多様性の復元」については、渓流環境の復元を目指した治山ダムの撤去、自然の回復力を生かした自然林再生試験地の設定、それらの結果やモニタリングの成果に照らしながら順応的に管理することを明記した計画(赤谷の森管理経営計画書)の策定などに取り組みました。これらは日本の先行事例となり、今後の道筋も見えてきています。
一方、「持続的な地域づくり」については、地域住民が地域の水源や教育の場となる森の恵みに気づき、それを自ら保全する活動を一緒に続けてきました。しかし、地域の暮らしと主な産業(観光業や一次産業)の中では、プロジェクトのモニタリング成果とさまざまな森の恵みを、地域全体が主体的に活用するまでには至っておらず、その道筋をつくっていくことが、今後10年間の大きな課題です。
今年、プロジェクトでは、7年間の取り組みをまとめて発信することを計画しています。NACS‐Jがプロジェクトに取り組む意義は、多様な主体による自然資源の管理を試行・実践し、日本の自然保護の先行事例として、ほかの地域で活用することです。まだ試行的な側面も多いのですが、AKAYAプロジェクトの取り組みを理解し、会員の皆さんに活用していただける資料にしたいと思います。