尾瀬・至仏山の東面登山道は、下山路に使わないこととしました。
会報『自然保護』No.499(2007年9/10月号)より転載
今夏、尾瀬は尾瀬国立公園として日光国立公園から独立し、昨年森林生態系保護地域となった福島県の会津駒ケ岳・帝釈山方向に範囲が拡大されました。
新しく国立公園となった場所には観光客が増えることが予想され、NACS-Jからは、拡大地域の自然環境に対し、現登山道の位置の変更などの予防的措置を、環境省(関東自然保護事務所)に要望しました。
また、尾瀬の至仏山では、雪が消えた後に現れる雪田植生を登山者の踏みつけから守ろうと、ゴールデンウィーク後から6月末の融雪時期の間は入山自粛措置が取られています。
今年はその解禁日を7月1日としたのですが、このタイミングではまだ登山道の一部が雪に埋もれているため、登山者が道脇に露出する脆弱な雪田植生の上を歩いてしまう事態が起きてしまいました。この時期の、この環境はただの枯れ草の地面に見えてしまうので注意されにくく、踏みつけは今も植生破壊の原因であり続けています。
このためNACS-Jでは、至仏山保護のあり方を検討する緊急対策会議の臨時開催を要望し、解禁日判断を来年はより慎重に行うこと、入山口に注意書きを増やすことなどを即日決めました。
さらに、今年から、東面登山道という、山ノ鼻(尾瀬ヶ原)~至仏山頂間の急傾斜の道を「原則登り利用」とすることを決めていましたが、登山者に全く知られていないことから、関係者は周知を徹底することも申し合わせました。会員の皆さまで、このような情報を広報する手立てをお持ちの方は、ぜひご協力をいただきたく思います。
(横山隆一 常勤理事)
▲左側のロープとロープとの間が本来の登山道。雪上が滑るため、右側の雪田植生上を歩く人が出てしまう。