小笠原諸島の自然を永続的に保護していく仕組みづくりを始めました。
会報『自然保護』No.492(2006年5/6月号)より転載
小笠原諸島は固有種が極めて多い独自の生態系を持ち、その確実な保護が求められている地域です。NACS-Jは、1980年代の兄島に計画された空港建設問題に対して保護活動を行うなど、地域全体の保護のあり方を探ってきました。現在、この兄島空港計画は見直しとなりましたが、外来種による生態系の変質の問題などが顕在化しています。
例えば、アカギ(常緑樹)は旺盛な繁殖力で分布を拡大させ、固有植物の生息地を狭めています。また、グリーンアノール(米国産のトカゲ)は昆虫類を活発に捕食し、オガサワラシジミ(チョウ)など固有動物を絶滅に追いやりつつあります。
これ以上の生態系の劣化を止め、元の生態系を取り戻すには、外来種駆除の方法の確立と実施とともに、在来種の生育・生息地の保全が必要です。しかし、これらすべての課題解決を一つの調査機関や団体で行うことは不可能で、複数の行政機関や団体が力を合わせることが何より必要となっています。小笠原諸島全体の保全対策間で矛盾が起こらないよう、課題を整理し、各調査・研究の連携・分担を図る保全管理組織も必要です。
NACS-Jは、小笠原諸島全面積の約6割が国有林であることに注目しました。そして、現在一部分に指定されている保護地域(保護林)を国有林全域に拡大した後に、常設の保全管理組織をつくるという企画を林野庁に提案してきましたが、これを協力して行っていくことが決まりました。2006年8月までに保護地域を明確にし、その後に保全管理委員会(仮称)という保全の仕組みにつなげたいと考えています。
(金子良知夫 総合プロジェクト小笠原担当)