尾瀬・至仏山の「保全基本計画案」を策定しました。
会報『自然保護』No.489(2006年1/2月号)より転載
NACS-Jは群馬県に協力し、県の専門委員会とともに、登山道沿いの自然の荒廃が長年問題となってきた至仏山の現況調査を3年間にわたり行なってきました。その結果を踏まえ、このたび至仏山保全基本計画案(以下、計画案)をつくり上げました。
計画案では、対象地が国立公園の特別保護地区であることもあり、特異な生態系を守ること(=至仏山としての生物多様性の保全)を第一とし、それが壊されない範囲でのみ利用を考える、という保護を優先する原則をあらためて立てています。
調査では、登山道(利用施設)が、本来脆弱な場所を通っているために起こる荒廃が、かなり大きいことがわかりました(2005年7/8月号参照)。したがって、場所によっては、登山道を比較的外圧に強い環境の場所につけ替えるという根本的な提案をしています。
もちろん、登山道移設における影響調査は不可欠で、すぐに移設が実行できることではないので、ルート変更までの暫定対処も含めた段階的な記述もしています。
その他、生態系のプロセス(遷移)を重視した植生修復の原則、狭い登山道でもはみ出さないための利用のあり方(利用調整地区指定による密度管理やガイドの導入等)など総合的な提案となっています。
11月28日に行なわれた「至仏山保全緊急対策会議」において、関係者間でこの方向性に関する合意が得られ、計画案に沿って至仏山保全を具体化していくことが決まりました。ご協力をいただいた方々に感謝いたします。
▲流紋岩区間におけるルート変更案 脆弱な雪食凹地(水色の部分)を完全に避けた、尾根線沿いの新規ルート設定を提案。
金子良知夫(総合プロジェクト尾瀬担当)
横山隆一(常勤理事・至仏山保全緊急対策会議委員)