「佐武流(さぶる)森林生態系保護地域と国立公園・国定公園を結ぶ位置にある重要な森林であることを指摘」
三国高原リゾート計画地 地元団体と現地視察
『自然保護』No.368(1993年1月号)より転載
さる10月22、23日の両日、保護部は、群馬県の三国高原で計画されているリゾート開発計画の現地視察を地元団体と合同で行い、今後の活動方針などについて協議した。
これは、地元「新治村の自然を守る会」の協力要請に応じたもので、NACS-Jからは渡辺いづみ研究員が出席した。三国高原には、国土計画によるスキー場開発が計画されている。これが完成すると周辺の既存スキー場がつながれ、大規模なリゾート地が誕生することになる。
予定地の谷は、国立公園・県設の鳥獣保護区であり、ブナの自然林や里山的に利用されているカラマツの植林地などが広がっている。現地視察の際には、青空の下に葉を落とし始めたブナ林、その中には深い森のままの針葉樹が点在し、カラマツが黄色く色づいて周辺の植生の様子が一望できた。
合同視察を行った「新治村の自然を守る会」のみなさん約10名とは、新設のスキーリゾート予定地には良好な自然が残されていることや、既設スキー場などと比較した場合、今後保全していくべき場所であることを再確認した。
また、現地視察後には今後の活動方針などを相談。保護部では各種の資料を1枚にまとめた地図を示しながら、予定地自体は法的に保護の規制が厳格な地域でないが、現在設定作業中の佐武流(さぶる)森林生態系保護地域と国立公園・国定公園を結ぶ位置にある森林であることを指摘した。
これは、この地域がツキノワグマやニホンザルなど広い行動圏を必要とする野生動物の移動のための重要な通路となっている可能性を示している。
「新治村の自然を守る会」は、今後もこの地域の自然環境・文化的な環境としての位置づけを確認しながら保護活動を続けてゆく方針を確認し、10月28日には前橋営林局に視察を行った谷の保全の申し入れを行った。