普天間飛行場代替施設建設事業による辺野古と奄美の自然破壊について再考を求める要望書を出しました。
普天間飛行場代替施設建設事業による辺野古と奄美の自然破壊について再考を求める要望書(PDF/151KB)
2015年5月1日
防衛大臣 中谷 元 様
沖縄防衛局長 井上 一徳 様
環境大臣 望月 義夫 様
公益財団法人 日本自然保護協会
理事長 亀山 章
普天間飛行場代替施設建設事業による辺野古と奄美の自然破壊について再考を求める要望書
日本自然保護協会は、日本全国各地で60年間以上にわたり自然保護に関する活動を行ってきた。辺野古・大浦湾についても、この地域の生物多様性の豊かさに注目しその保全を訴えてきた立場から意見を述べる
普天間飛行場代替施設建設事業には1,664万立方メートルという大量の土砂(岩ずり)が必要である。2013年に「普天間飛行場代替施設建設事業 公有水面埋立承認願書」にて、埋め立て用に沖縄県外から大量の土砂の搬入が予定されていることが公表され、県外の調達予定地として瀬戸内、門司、五島、天草、佐多岬、奄美、徳之島の計7か所が示された。
中でも、奄美大島は最大で530万立方メートルの土砂の調達が予定されており、現在、採石行為や採石に向けた準備が行われていることが沖縄タイムスにより報じられた(2015年4月23日、24日、25日、27日)。この採石は、普天間飛行場代替施設建設事業との関連性が高く示唆されており、公有水面埋立承認願書により示された土砂調達先の中で県外では2番目の規模と大きな割合を占めている。
奄美大島も沖縄島も世界自然遺産に環境省が推薦するほど生物多様性豊かな島である。
どちらの島においても生物が別々に進化をとげたため、それぞれの固有種が生息・生育している。このような島の間で、大量の土砂を移動させるということは、外来種の移入という大きなリスクを伴う。
また、土砂を搬出する島では、土砂を採る際に植生を剥ぎ裸地化した山や一時的な土砂置き場から、雨が降ると赤土や泥が海に流入し、サンゴ礁の海に影響を与える。
奄美の山を削って辺野古の海を埋める、つまり絶滅危惧種であるアマミノクロウサギをはじめとする生き物たちの生息地を奪い、同じく絶滅危惧種であるジュゴンをはじめとする多くの生物が棲む場所を破壊するということは、許されることではない。
日本が議長国をつとめ2010年に開催された第10回生物多様性条約締約国会議(COP10)で合意された目標「愛知ターゲット」の目標9「外来種の根絶」、目標10「脆弱なサンゴ礁の保全」、目標12「絶滅危惧種の保全」のいずれにも背く行為である。
両島は豊かな自然を守るため、世界自然遺産登録を目指す活動を続けている。しかしこのままでは、2つの島の貴重な自然を同時に失う、二重の自然破壊を招くこととなる。
沖縄と奄美大島の自然を大きく破壊する本事業について再考を求める。
(写真:自然と文化を守る奄美会議)