普天間飛行場代替施設建設事業に係る環境保全措置の監視をより積極的に行うことを求める要望書を出しました。
普天間飛行場代替施設建設事業に係る環境保全措置の監視をより積極的に行うことを求める要望書(PDF/217KB)
2015年4月30日
沖縄県知事 翁長 雄志 様
知事公室長 町田 優 様
土木建築部長 末吉 幸満 様
農林水産部長 島田 勉 様
沖縄・生物多様性市民ネットワーク
代表 吉川 秀樹
代表 河村 雅美
公益財団法人 日本自然保護協会
理事長 亀山 章
普天間飛行場代替施設建設事業に係る環境保全措置の監視をより積極的に行うことを求める要望書
辺野古・大浦湾の環境保全に沖縄県がご尽力いただいていることに感謝しております。特に、今回の沖縄防衛局への海上作業調査停止の指示や、農林水産省への弁明書の提出など、具体的な対応を心強く思っており、県のさらなる取り組みに期待しております。
そのうえで、私たち沖縄・生物多様性市民ネットワークと公益財団法人日本自然保護協会は、環境保全の立場から同事業に関して関与を重ねてきた環境団体として、沖縄県に以下の2点を要望いたします。2点とも、2013年12月に仲井真弘多前知事が普天間飛行場代替施設建設事業に係る公有水面埋立を承認した際に、沖縄防衛局に課した留意事項を踏まえています。
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沖縄県は、環境監視等委員会に対してより積極的に関与して下さい。具体的には、沖縄県からの情報提供と会議へのオブザーバー参加の要求です。拒否された場合のしかるべき措置も検討して下さい。また、下記の事項については、県として環境監視等委員会へ議事として提案し、同委員会の環境保全への具体的かつ包括的な取組を促して下さい。
理由:
留意事項1で、環境監視等委員会は環境保全の担保として設置が求められ、沖縄防衛局により設置されました。しかし、委員会は非公開で行われ、議事録が適時に公開されないなど多くの問題を有しています。さらには、最近の私たちの防衛省や沖縄防衛局へのヒアリングや公開された環境監視等委員会の議事要旨や資料において、2014年5月~7月に辺野古・大浦湾の基地建設予定地や周辺において確認されたジュゴンの食痕についての情報を含む様々な問題が議論されていないことが判明しています。環境監視等委員会を機能させるためには、必要な情報が適時に提供され、透明性と委員の説明責任が担保された運営体制の下で議論が行われることが必要です。沖縄県は、留意事項を求めた当事者であることを今一度認識し、沖縄防衛局の同委員会の運営を監視する役割を果たすためにも、受け身ではない、より積極的な関与をするべきだと考えます。 -
沖縄県は、沖縄防衛局に対して、工事中の環境保全対策等について県や関係市町村への報告(資料提出を含む)を適時に確実に行うよう要求して下さい。また報告の方法についても、県や各関係市町村において場を設けて報告させるなど、県が主導権をもって設定して下さい。さらにその内容を県として検証し、検証内容を沖縄防衛局と環境監視等委員会に提出し、市民に公開して下さい。
理由:
留意事項「2.工事中の環境保全対策等について」には上記に続き、「またこれらの実施状況について県及び関係市町村に報告すること」と記載されています。しかし、実施状況の報告について、事業者である沖縄防衛局が実施しているとは言い難い状況です。また、これから報告があるにしても、いつ報告が行われるかというタイミングも非常に重要です。環境保全において取り返しのつかない状態になってから、報告が行われても意味がありません。沖縄県には、県や関係市町村への沖縄防衛局の報告の状況を検証するよう要望します。特に、報告が公有水面埋立法を遵守するためのものであるという認識のもとで、検証するよう要望します。
環境監視等委員会の議事として提案し、沖縄県として注目・検証すべき事項:
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(1)環境影響評価(以下、環境アセス)後に判明した科学的事実や寄せられた専門家の意見が議論に反映されていない事項
- 2014年に自然保護団体が行ったジュゴンの食痕調査により、ジュゴンがこれまで以上の高い頻度で辺野古・大浦湾における埋立予定地内および周辺を餌場として利用していたことが確認された。しかし沖縄防衛局は、環境アセス調査では確認されなかったジュゴンの行動について、環境監視等委員会に対して議事としても提案しておらず、環境監視等委員会では議論が行われていない。
- 日本生態学会をはじめとする19の学術団体から「著しく高い生物多様性を擁する沖縄県大浦湾の環境保全を求める19学会合同要望書」が2014年11月に提出されているが、これに関しても環境監視等委員会で議論されていない。
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(2)沖縄防衛局や環境監視等委員会の環境保全の内容に問題があると考えられる事項
- 海草移植やサンゴ類の移植の技術は未確立であるが、海草やサンゴ類に対しては移植しか保全措置が取られていない。その他の確実に有効な保全策が必要である。
- 沖縄防衛局は2014年の7月~10月に貝類等の生物の移動・移植作業を行ったが(沖縄防衛局、2015)、2015年の春の時期は生物の移植作業を行っていない(防衛省、2015年4月7日)。沖縄防衛局のスケジュール通り、8月に本体工事が始まるのであれば、今春が最後の移植の時期であったと言える。移植技術は未確立ではあるものの、海藻など春にしか姿を現さない生き物たちのほとんどは移植の対象とすらならず、2010年の調査で大葉英雄氏により発見された新種の海藻4種をはじめとする海藻類(朝日新聞2010年7月16日)、熱帯域では珍しい大きさ3~7メートルになるマジリモク(沖縄タイムス2014年11月3日)などが永久に失われる可能性がある。
- 同じく移植の対象となっていない生物に、ユニークな生活史を持つことで知られているコモチハナガササンゴ群集(日本自然保護協会2014年7月9日記者会見資料)や、2011年5月に発見された新種のウミウシ2種やトゲトサカテッポウエビとソフトコーラルなどがいる。それらの共生関係や生態などがよく研究されることなく永久に失われてしまう可能性が高い(会報『自然保護』No545より)。
- 全ての船はジュゴンの保護のために船の航行の速度を18ノットにおさえること、と評価書の保全措置には記されている。沖縄防衛局が海上保安庁の船にその情報を伝えていないため、現場ではそれを超えるスピードで船が航行しており、同海域を利用するジュゴンには衝突の危険性がある。
- 埋め立ては直接の改変地のみに影響を与えるわけではなく、広く周辺の環境にも影響を与えるが(日本自然保護協会、2013)、環境アセスでは予測がなされていない。仮設岸壁など大きな構造物が一時的にでも建設されると周囲の環境に広く影響が及ぶ可能性がある。そのため移植という措置を試みるならば本体工事着工の前に行わなければならない。