環境省・重要海域の抽出に対する意見を提出しました
環境省・重要海域の抽出に対する意見(PDF/151KB)
2013年11月30日
環境大臣 石原伸晃 殿
環境省・重要海域の抽出に対する意見
公益財団法人 日本自然保護協会
理事長 亀山 章
日本自然保護協会(NACS-J)は、生物多様性を保全するため、日本の重要海域が適切に設定され、効果的な保全が進むことを強く希望します。
今回、環境省の重要海域の区域線(原案)が公表されましたが、その前提となる重要海域の抽出方法や重要海域の見直しの体制につき問題があると考え、以下の意見を述べます。
1.生態系に意味のある境界線(区域線)や地域抽出を導入すること
今回公表された重要海域の区域線(原案)では、基本単位を5kmのグリッドという幾何的なパターンとしておりますが、この境界線には生態学的な意味がありません。例えば海岸線のような重要な境界線も考慮されていません。Bioregionの境界線は、生態学的、地理学的に意味があるように設置することが重要です(WRI / IUCN / UNEP ,1992)。また特にサンゴ礁海域において、5kmという距離は大きすぎ、海域の特性を十分に表現できていないため、より小さな単位での解析が必要です。
2.新たなデータが出た場合には、重要海域の見直しを常に行えるような体制にすること
海に関しては十分な科学的データが揃っていないものが多くあります。今後、新しい知見が得られた場合には、重要海域の選定の修正に常に対応できる体制を取ることが大切です。
なお、今回の意見取集は、短期間であり、その対象が専門家に限られておりますが、そのことに関しては、以下のような問題があることを指摘しておきます。
3.意見聴取期間を長く取ること
今回の意見募集は11月12日に公表され、11月30日に受付終了という短期間です。より多くの専門家から意見を集めようという姿勢が見られませんので、今後の体制の改善を望みます。
4.市民調査を活かし、育てる体制を作ること
全国の海でさまざまな市民調査が行われています。しかしながら今回の重要海域の抽出には、市民や多くのNGO の調査結果や目撃記録等は取り入れられておらず、また意見の募集の対象にも含まれていません。市民やNGO の研究や調査データを含む、あらゆるデータを活用するよう努力すべきです。
環境省は専門家以外から寄せられるデータを活かせるよう努力を行っていただきたい。調査方法や生物同定等について基準を示していただければ、市民が調査の内容の改善等において対応し、より活用しやすい形に出来ることもあります。
さらには、日本の、特に海の市民調査を育てることを環境政策の中に位置づけていただきたい。海の調査ができる人材は絶対数が少ないため、調査にかかわる人材の裾野を広げる必要があります。ビジターセンターのレンジャーや、地域のキーパーソン、地域の市民団体などが、市民にモニタリング調査への参加を呼びかけ、調査の実施を継続的に可能にし、将来的には市民モニタリング調査の結果が的確に政策に反映されるような仕組みを構築することが望ましいと考えます。
≪参考≫
WRI/IUCN/UNEP(1992).Global Biodiversity Strategy.
WRI, Washington, D.C./IUCN, Gland, Switzerland/UNEP, Nairoci, Kenya
【外部サイト】
◎環境省・重要海域の抽出に関する専門家の意見収集
http://marine2013.jwrc.or.jp/