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沖縄島周辺のジュゴンの保全を求める要望書を提出しました。

2013.10.14
要望・声明

沖縄島周辺のジュゴンの保全を求める要望書(PDF/202KB)


2013年10月11日

沖縄県知事 仲井真弘多 殿

沖縄島周辺のジュゴンの保全を求める要望書

公益財団法人 日本自然保護協会
沖縄・生物多様性市民ネットワーク
北限のジュゴン調査チームザン
ジュゴン保護キャンペーンセンター
ジュゴンネットワーク沖縄

 

日本のジュゴンは、沖縄島周辺のみに生息が確認され、分布域が狭く、個体数が少なく、他の個体群から孤立しています。ジュゴンは環境省のレッドリストでは絶滅の危機が最も高いランクの絶滅危惧ⅠA類にされ、国の天然記念物にも指定されています。普天間飛行場代替施設に係る環境影響評価で行われた調査によると、確認されたジュゴンは3頭で、その回遊ルートは古宇利島から辺戸岬を回り大浦湾にかけての沖縄島北部の沿岸域に限られていました(沖縄防衛局2009など)。この危機的状況を鑑み、国際自然保護連合(IUCN)からも、これまで3度の勧告・決議が出されており、勧告・決議のなかで日本政府に対し、ジュゴンなどの生物の保全のため、ゼロ・オプションを含めた環境影響評価を行うよう求めてきました。

事業の実施が予定されている辺野古/大浦湾では、環境省が2003 年に辺野古地先リーフ内でジュゴンの食痕や糞などを確認し、日本自然保護協会も2004 年1 月に辺野古地先リーフ内でジュゴンの食跡を発見しています。その後しばらくジュゴンはこの海域を利用しなかったようですが、また最近になり辺野古や大浦湾にジュゴンの食み跡が再び発見されました(共同通信配信記事 9月22日など)。

このように、日本のジュゴンは残された一頭づつの命が非常に重く、船舶との衝突や生息環境の悪化などの原因となる行為は、可能な限り取り除くことが必要です。
環境影響評価手続きの中では明らかにされず、この6月に告示・縦覧された公有水面埋立承認願書にて、初めて位置や規模が明らかにされた事項のなかに、今後のジュゴン個体群の存続にとって重要な問題が以下の2つあります。
 

1. 海砂採取

沖縄島周辺に位置する6か所の地点から海砂が採取される予定です。このうち、特にジュゴンの回遊ルートや餌場に近い沖縄島北部に位置している4か所での採取による、ジュゴンの個体群の維持に与える影響は甚大であると考えられます。

海砂採取における問題点はこれまでに2つあげられています。1つは、海底の掘削による地形変化であり、底質の粒度組成の変化による底生生物相の変化(松田1999)や海底地形の変化による流況の変化(高橋ら2002)が指摘されています。もう1つは、濁水の拡散が海域環境に与える影響であり、透明度の低下(門谷・張2000)やそれに伴う藻場の減少(高橋ら2005)が指摘されています。

海砂採取地の4か所のうち1つに隣接する嘉陽の海草藻場にはジュゴンが頻繁に訪れますが、この海草藻場の周囲の砂も、これまでの嘉陽沖で行われてきた海砂採取に伴い移動や改変が見られています。これ以上の改変は、海草藻場を餌場とする絶滅危惧種のジュゴンやウミガメにとっては取り返しのつかない大きな影響となります。残りの3か所についても、沖縄防衛局の調査により、ジュゴンの日常的に利用している回遊ルートの上に位置します。

 

2.本部町・国頭村から辺野古/大浦湾への土砂運搬船ルート

今回初めて公表された事項の2つ目に、本部町・国頭村から辺野古/大浦湾への土砂運搬船のルートがあります。 音がジュゴンに与える影響やこれまでにジュゴンが船舶の衝突等の被害にあっていることを鑑みると、このルートが沖縄のジュゴンの個体群に与える影響は甚大です。

ジュゴンは人間が気づく前に船に気付いて潜水するため船上からのジュゴンの発見はほとんど不可能であるのみならず、近距離で発見されたジュゴンに対して大型船舶が回避行動をとることは極めて困難です。

日本におけるジュゴンの個体群の存続は、現在生息が確認されている3頭の保全にかかっています。公有水面埋立承認願書において初めて明らかになったということは、これら2つの行為は環境影響評価がなされておらず、また現在の国および沖縄県の環境影響評価の制度内では、環境への影響は予測されず、何の環境保全措置もとられないまま事業が進むということを意味します。

 
これらのことから、沖縄県に、沖縄の宝であるジュゴンの保全のために、以下の3点を実現してくださることを要求いたします。

  1. 普天間飛行場代替施設建設事業に伴う海砂採取予定地のうち、ジュゴンの生息を脅かす沖縄島北部の4地点について、この行為が環境に与える影響を調査・予測・評価し、適切な保全措置をとること
  2. 普天間飛行場代替施設建設事業に伴う沖縄島での土砂運搬船がジュゴンや環境に与える影響を調査・予測・評価し、適切な保全措置をとること
  3. 既存の制度内で調査が出来ないのであれば、沖縄のジュゴンを保全するために、特別に環境への影響の調査・予測・評価を行い、保全措置をとること

 
<参考文献>

  • 沖縄防衛局(平成21年4月)普天間飛行場代替施設建設事業に係る環境影響評価準備書
  • 2013年9月22日共同通信配信「辺野古沖でジュゴン確認 普天間移設予定先に食跡  防衛局公表せず」
  • 松田治(1999)海砂利採取の生態系への影響過程.瀬戸内海. 19:29-34
  • 高橋暁など(2002)瀬戸内海芸予諸島周辺海域の海砂採取が流況に与えた影響.沿岸海洋研究. 40:81-90
  • 門谷茂・張志保子(2000)瀬戸内海の海砂利採取に伴う高濁度排水の排出による環境影響. 瀬戸内海. 22. p32-26
  • 高橋暁など(2005) 瀬戸内海の海砂採取周辺海域における透明度の変化と藻場分布の関係. 沿岸海洋研究 第42巻. 第2号.p151-159

 

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▲名護市東海岸を泳ぐジュゴン(撮影:東恩納琢磨)

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▲嘉陽のジュゴンが見える丘から見下ろした海

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