沖縄担当副大臣と面会し、泡瀬干潟の埋め立て中止と保全を要請しました。
2010年8月3日に前原誠司元沖縄担当・国土交通大臣から驚くようなことが発表されました。何と中断していた中城(なかぐすく)湾港泡瀬干潟埋め立て事業(東部海浜開発事業)の再開にゴーサインを出したのです。
この海域の埋め立てに関しては08年、地元住民らが裁判を起こし那覇地方裁判所にて「経済的合理性がない」と沖縄市と沖縄県に公金差し止めを命じる判決が下りています。その後、市と県が控訴しましたが、控訴審判決においても沖縄市は「新たな土地利用計画に経済的合理性があるか否かについては、従前の土地利用計画に対して加えられた批判を踏まえて、相当程度に手堅い検証を必要とする」と指摘を受けています。
そして09年の政権交代時には「コンクリートから人へ」という民主党のマニフェスト通りに「1区中断、2区中止の方向で取り組む」と当海域の埋め立て事業を中止することを表明したにもかかわらず、1年も経たないうちに同じ大臣の口から正反対の言葉が出てくるとは驚きです。
NACS-Jは、その知らせを聞いてすぐに、埋め立て事業の中止と干潟の保全を求める緊急声明を出しました。11月には声明をもって他団体とともに末松義規沖縄担当副大臣や内閣府担当者、与党国会議員などに面会し要請行動を行いました。しかし、国は新しく提出された沖縄市の案には経済合理性があると回答し、事業再開の方針を示しました。ところがらその根拠となる資料を一切出さず、また判断を下した際に有識者9名の意見を取り上げたと言いつつ有識者の氏名の公開すら拒む、という国民への説明責任を果たしていない状況です。
NACS-Jは地元の人たちと協力して、泡瀬干潟の埋め立て計画地とその周辺海域で海草やサンゴ、地形の調査を工事が始まる前から継続的に行っています。調査の結果、現在までの工事によって、砂州が大きく変形したり、土砂の堆積により海草藻場やサンゴが消失するなどの影響を受けていることを証明しています。
▲干潟域のマツバウミジグサ・コアマモ群落の変化。(左:工事前の2004年9月、右:2010年8月)
生物多様性条約COP10で採択された愛知ターゲットの目標10には「脆弱な沿岸生態系を保全すること」が入りました。議長国の日本がこのようなことをしていて良いのでしょうか。NACS-Jはこれからも科学的データをもって国、県、沖縄市に泡瀬干潟の埋め立て中止と生物多様性保全を要請していきます。
(安部真理子/保護プロジェクト部)