泡瀬干潟の生物多様性を大きく破壊する見直し案に経済的合理性はない——-事業再開への緊急声明
泡瀬干潟埋め立て事業再開への緊急声明(PDF/174KB)
泡瀬干潟埋め立て事業再開への緊急声明
泡瀬干潟の生物多様性を大きく破壊する見直し案に経済的合理性はない。埋め立て事業の中止、干潟の保全を求める
2010年8月6日
(財)日本自然保護協会
7月30日、沖縄市は泡瀬干潟埋め立て事業(東部海浜開発事業)の見直し案を公表、8月3日、前原誠司沖縄担当大臣は、東門美津子沖縄市長が提出したその土地利用計画見直し案を了承し、事業再開の方針を示した。
しかし、見直し案は、泡瀬干潟生態系の特性を何ら考慮しておらず、環境への配慮は科学的根拠を著しく欠いている。経済的合理性についても、かけがえのない環境の価値の損失を含め、全く実証されていない。
泡瀬干潟は、陸から沖に続く干潟、海草藻場、砂洲、サンゴ群集、水深5m前後の潮下帯といった一連の多様な環境から成り立ち、それらがバランスを保ちつつ極めて高い生物多様性を育んでいるのが特徴である。そのため、第Ⅰ区域を埋め立てる沖縄市の見直し案は、泡瀬干潟の生態系を分断し、豊かな生物多様性を破壊するものである。
第Ⅰ区域にはリュウキュウキッカサンゴ、スギノキミドリイシ等のサンゴが生息し、この海域で新たに確認されたホソウミヒルモやリュウキュウズタなどの新種が生育している。埋め立てにより、それらの貴重な命が失われるだけでなく、種の存続にも大きな影響を与える可能性がある。
事業を中止した第Ⅱ区域は、干潟の活用・保全を図るとしているが、既に建設された第Ⅰ区域の護岸だけでも、環境影響評価では予測されていなかった地形変化(砂洲の変形)や海草藻場の大規模な消失、サンゴ群集の劣化が起こるなど、大きな影響が出ている。
昨年10月15日の控訴審判決で、沖縄市は「新たな土地利用計画に経済的合理性があるか否かについては、従前の土地利用計画に対して加えられた批判を踏まえて、相当程度に手堅い検証を必要とする」と指摘を受けている。また、現政権は、発足時に環境負荷の大きい公共事業、経済的合理性のない公共事業は見直し、中止する方針を明言している。
しかし、国も沖縄市も見直し案の検証プロセス及び検証結果については何一つ国民には説明していない。二度にわたる裁判判決を踏みにじり、国民に約束した政策を反故にし、説明責任を果たさないまま、埋め立て事業を再開することは許されることではない。ましてや生物多様性条約COP10の議長国として、政府自らが生物多様性を破壊する先鋒となることは国際社会にも説明できない。
国と沖縄市は、裁判判決の意味するところを真摯に受け止め、泡瀬干潟の埋め立て事業を中止し、本海域の生物多様性保全に尽くすべきである。
以上