北海道の国有林の7割を占める天然林の取り扱い方針がまとまりました。
会報『自然保護』2008年3/4月号より転載
私も参加する北海道森林管理局の生物多様性検討委員会での1年間の議論が、「北海道国有林の生物多様性保全を目指して」というタイトルでまとめられ、1月31日に配布されました。
レポートに書き込まれた内容で注目いただきたい点は、
- これまでの北海道での天然林施業には生物多様性の観点からみるといろいろな問題があり、改善の必要があること。
- 特に島嶼や生物種・群集の分布の端に当たる天然林の資源利用はやめるべきであること。
- 本来の生物群集に更新できない・させられない地域の管理のあり方を再検討すべきであること。
- 必要な保護林の拡大とともに、既存の保護林の整理統合や調査研究が必要なこと、
などです。
この検討委員会では、大規模に森林施業が行われた場所を見る機会がありました。厳しい自然条件にある天然林伐採地がササの海になっていたり、土地本来の植生とは全く異なる種構成となっていたり、倒れた木から次の世代が育つという倒木更新を必要とする場所で台風時の倒木をすべて搬出してしまい、更新の基盤そのものが失われていたりと、人為による生物多様性の低下が明らかな場が少なくありませんでした。
今後も検討会は続きますが、これら問題への対処の具体策、これ以上多様性を低下させない方策、低下させてしまった場の修復方法の研究開発と事業化が急務となっています。
全国の国有林の半分を占め、その7割が天然林という北海道の国有林。1年中低温であるなど厳しい環境のため、再生も難しい自然であることから、これ以上の荒廃は、ここで完全に止めなければなりません。林野庁は本気になるべきです。
(横山隆一・常勤理事)
※生物多様性検討委員会の議事録は、北海道森林管理局のホームページで閲覧できます。
http://www.rinya.maff.go.jp/hokkaido/