絞り込み検索

nacsj

沖縄県・泡瀬干潟~浚渫・埋立工事の一時中止の要請を提出

2006.03.20
要望・声明

2006年1月に工事着手!生物多様性の保全策が不十分な浚渫・埋立工事の一時中止の要請を提出。

「中城湾港(泡瀬地区)公有水面埋立事業における生物多様性保全を求める要請」(PDF/188KB)


<写し>

2006年 3月20日

沖縄県知事 稲嶺惠一 様
環境大臣・沖縄及び北方対策担当大臣 小池百合子 様
沖縄県文化環境部長 伊佐嘉一郎 様

(財)日本自然保護協会
理事長 田畑貞寿
(財)日本野鳥の会
会 長 柳生 博
(財)世界自然保護基金ジャパン
事務局長 日野迪夫
(印章省略)

中城湾港(泡瀬地区)公有水面埋立事業における生物多様性保全を求める要請

現在、泡瀬地区では海上工事が進められており、沖縄総合事務局は、2006年1月から仮設桟橋周辺の浚渫および護岸内の埋立に着手しています。

泡瀬干潟の研究者らによると、2005年9月に沖縄県文化環境部自然保護課が公表した「改訂・沖縄県の絶滅のおそれのある野生生物(動物編)」(レッドデータおきなわ)には、121種の海洋生物(甲殻類・貝類・魚類)が泡瀬干潟および周辺の浅海域に分布するとされています。この改訂で新たに絶滅のおそれのある種が追加されたことから、埋立事業においては、これまで貴重種・重要種とされなかった種についても認識を新たにし、保全対策を取る必要があります。

しかし、事業者が、2005年12月7日付で、沖縄県に対し、新たに生息を確認した種と改訂版「レッドデータおきなわ」への対応について行った報告では、「レッドデータおきなわ」記載種等の保全対策は全く書かれていませんでした。

また、それに関する沖縄県文化 環境部との調整は未完了であると聞いています。そのような状況にも関わらず、泡瀬の干潟および浅海域の中で、生物多様性保全上、最も重要な場所の1つとされる海域(泡瀬干潟自然環境調査委員会2005)において、浚渫と埋立が続行されています。

このような工事の進め方は、レッドデータブックの重要性、環境影響評価書の沖縄県知事意見および事業者見解で示されている「環境保全措置」を軽んじるものです。 私たちは、泡瀬海域の生物多様性保全を実現するため、次のことを要請します。

沖縄県知事および環境大臣は、事業者に対し、

  1. 改訂版「レッドデータおきなわ」に新たに記載された種および研究者・市民グループ等によって確認された種の追加調査と保全対策を、関係する委員会を開催して科学的、専門的な検討を経た上で、確実に実施するように指導・助言すること。
  2. 上記について必要な保全措置をとるまでは、環境影響評価書への沖縄県知事意見および事業者見解にもとづき、工事を一時中断するように指導・助言すること。

【理由】

1.改訂版「レッドデータおきなわ」に新たに記載された種についての現況把握調査がなされていない。

2005年12月 7日の事業者の沖縄県への報告では、「レッドデータおきなわ」記載種のうち、これまでに事業者が生息を確認したのは103種であること、および平成11-16年度調査での確認状況(時期・位置)を報告している。しかし、これらの調査は監視調査として実施しているものであり、調査地点はその多くが埋立区域外である。 埋立の影響と、保全策を検討するためには、埋立予定地内の生息状況の調査も必要である。

2.「埋立区域外に生息しているから保全できる」とするのは科学的根拠がない。

研究者・市民グループ等が泡瀬海域で新たにその生育・生息を確認し、事業者に対して保全要請をしてきた希少種(ジャングサマテガイ等)、日本新記録種(ヒメウミヒルモ等)、 未記載種(ホソウミヒルモ、ニライカナイゴウナ等)は、その生態、生活史の大部分が未解明である。したがって、事業者の「埋立予定地内の生育・生息場は消失しても埋立区域外の生育・生息場が残るので保全できる」という見解は、著しく科学的根拠を欠いている。種ごとに、分布、生育・生息環境、生態、生活史を踏まえたうえで、泡瀬海域の生育・生息場としての重要度を評価し、埋立の影響と、保全策を検討すべきである。

3.埋立区域外の生息場も危機的状況にある

事業者は、改訂版「レッドデータおきなわ」に新たに記載された種および研究者・市民グループ等によって確認された種への対応について、そのほとんどは、「埋立予定地内の生息場は消失することになるが、埋立区域外の生息環境のモニタリングを実施し保全に努める」としている。しかし、「モニタリング」は、保全措置とはいえない。
平成17年度の環境監視調査結果中間報告(2006.3)では、埋立区域外の海草藻場の被 度の減少が報告されている。事業者が確認した「レッドデータおきなわ」記載種の多くは 海草藻場に生息しているが(平成17年度第2回環境監視委員会参考資料-1)、海草藻場の保全策は示されていない。 埋立区域外においても、現に海草藻場の被度の減少など環境変化が生じているので、貴重種・重要種の保護のために、その環境変化の原因を究明し、海草藻場等生物の生育・生息場の保全策を検討し、実行する必要がある。

  • 沖縄県知事意見:工事中に貴重な動植物が確認された際は,関係機関に報告するとともに,適切な措置を講じること.
  • 事業者見解:工事中に天然記念物指定種やレッドデータブック,レッドリスト等の記載種,その他貴重種・重要種に相当する種で,環境影響評価書に記載されている動植物種以外の種の存在が 埋立に関する工事の施工区域内若しくはその近傍で確認された場合には,関係機関へ報告するとともに十分調整を図り,その保全に必要な措置を適切に講じます.

以上

前のページに戻る

あなたの支援が必要です!

×

NACS-J(ナックスジェイ・日本自然保護協会)は、寄付に基づく支援により活動している団体です。

継続寄付

寄付をする
(今回のみ支援)

月々1000円のご支援で、自然保護に関する普及啓発を広げることができます。

寄付する