普天間飛行場代替施設建設事業に係る「辺野古沖縮小案」「キャンプシュワブ沿岸案」 に対する意見書を提出
【ご参考】米国政府に対しても同様の内容の要請を行いました。
ライス国務長官宛て(PDF/7KB)
ラムズフェルド国防長官宛て(PDF/7KB)
グリーン国家安全保障会議部長宛て(PDF/7KB)
英語版地図(PDF/199KB)
17日自然第85号
2005(平成17)年10月26日
外務大臣 町村 信孝 殿
防衛庁長官 大野 功統 殿
財団法人 日本自然保護協会
理事長 田畑 貞寿
普天間飛行場代替施設建設事業に係る『辺野古沖縮小案』『キャンプシュワブ沿岸案』に対する意見書
普天間飛行場代替施設建設事業に関し、複数の移設先候補地の報道がなされ、当協会は『辺野古沖縮小案』について、「縮小されても埋め立てによって生じる自然環境上の問題は何も解決されない」旨の意見を述べたところである(10月4日提出)。
その後、計画の詳細は明らかにされていないものの、キャンプシュワブの兵舎地区から滑走路を海に突き出す『キャンプシュワブ沿岸案』を移設先有力候補地の1つとして日米政府間で協議が続けられている。この案をこれまでの当協会や政府機関の調査結果等と照合したところ、下記のような自然環境上重大な問題点が見出され、『キャンプシュワブ沿岸案』でも、飛行場建設によって生じる自然環境上の問題は何も解決されない。
また、今回の移設先候補地選定は、環境配慮を事業アセスメントで行うという前提のため、自然環境に対する影響がまったく考慮されていない。選定プロセスは現行案と変わらず、「環境アセスメントでは、ゼロ・オプションを含む複数の代替案を検討すること」という第3回世界自然保護会議(2004年バンコク)の勧告を無視している。
以上のような理由により、当協会は、外務大臣、防衛庁長官に対し、『辺野古沖縮小案』『キャンプシュワブ沿岸案』の両方について、普天間飛行場代替施設建設事業に係る飛行場移設先候補地に含めないよう求める。
『キャンプシュワブ沿岸案』の問題点
大浦湾
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閉鎖性海域である大浦湾を構築物で遮断することによる生態系への影響は大きい。
当協会は、2005年9月19日に大浦湾で調査を行い、湾内に日本で従来知られていたウミヒルモ2種(ウミヒルモ、ヒメウミヒルモ)とは異なる形態のウミヒルモが生育していることを確認した。日本新発見あるいは新種の可能性もあり、さらなる調査、慎重な検討が必要である。
当協会の調査で記録されてきた7種の海草以外に新たな形態の海草が見つかったことや、湾内にユビエダハマサンゴの群集やスイショウガイに共生するキクメイシモドキが確認されていることは、大浦湾を含めた辺野古海域の高い生物多様性、生態系機能の一端を示すものであるといえ、閉鎖性海域である大浦湾を構築物で遮断することによる生態系への影響は大きい。
キャンプシュワブ前浅瀬
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キャンプシュワブ前の浅瀬には良好な海草藻場が広がり、飛行場の移設はサンゴ礁生態系に影響を与える。また、桟橋方式でも日照が不可欠な海草藻場は保全されない。
当協会が、2004年10月に行った辺野古海域の海草藻場調査によると、キャンプシュワブ前の浅瀬では、岸やリーフに近い調査地点を除き、すべての地点で海草が確認された(2005年9月の調査でも同様の結果を確認)。
さらにこの中には、当協会の調査で記録されてきた7種の海草のうち6種(ウミヒルモ、リュウキュウスガモ、ボウバアマモ、リュウキュウアマモ、ベニアマモ、マツバウミジグサ)が記録された地点もあり、良好な海草藻場が広がる海域であるといえる。また、滑走路を埋立方式ではなく桟橋方式で建設したとしても、海草の生育には日照が不可欠であるため自然環境への影響は低減されない。
海草藻場への悪影響は、ジュゴンやウミガメの餌場が失われることにつながるばかりでなく、礁斜面、礁嶺、礁池内のサンゴ群集・海草藻場、干潟等の構成要素が一体となって形成されているサンゴ礁生態系全体に影響を与えることになる。
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キャンプシュワブ前の浅瀬はジュゴンが利用しているエリアであり、ジュゴンの生息に影響を与える。
ジュゴンの痕跡に関するこれまでの那覇防衛施設局、環境省、当協会の調査結果から、キャンプシュワブ前の浅瀬においてもジュゴンの食跡2地点が確認されており、ジュゴンが利用しているエリアでの飛行場の建設はジュゴンの生息に影響を与えることになる。
以上
【添付資料】
図1:辺野古海域における『キャンプシュワブ沿岸案』と海草全体の分布(2004年10月)、ジュゴンの痕跡確認位置(拡大版(PDF/195KB))