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「国内外来種の今後の対応を明確に!」

2004.08.07
要望・声明

2004年8月7日

環境省自然環境局野生生物課 御中

(財)日本自然保護協会
理事長 田畑 貞寿

特定外来生物被害防止法基本方針(案)に係る意見

生物多様性保全の立場より、特定外来生物被害対策法の基本方針(案)について、下記のように意見を述べる。

総論

1. 国内外来種の扱いについて

該当箇所
「第5、5その他」(14頁)
意見内容
外来種対策小委員会でも議論されたように、本法律は、海外から導入された外来生物に限定し、特に国内移動による外来種(国内外来種)について、規制していないために、固有種の多い地域についての対応が図られておらず、大きな課題を残している。ノヤギのような家畜由来のものも含め、5年後の本法律改正時には見直すべき内容である。したがって、基本方針の「5その他」の事項で、「国内移動による外来種の対応の考え方」として今後の対処・検討課題について記述することは必須の要件である。

2. 国立公園内の持ち込み禁止で水際対策が図られるか

該当箇所
「第5、5その他」(14頁)
意見内容
来年4月に予定されている自然公園法の政令改正によって、公園内の「特別保護地区」「特別地域」への動植物の持ち込みを原則禁止とすると報道されており、前述の国内外来種のための対応とされている。しかし、固有種が約30%を占め外来種対策が世界遺産登録に向けて緊急の課題とされている小笠原諸島においては、白地(国立公園指定外)である居住地や港を通じて、外来種の持ち込みは可能なままとなり、現地でも境界が不明確な「特別保護地区」「特別地域」の規制だけでは、不十分である。また、外来種の問題の多い琉球諸島、奄美諸島ではごく一部しか国立公園・国定公園に指定されておらず、外来種対策を急がなければならない生物多様性上重要な地域において、自然公園法の政令改正だけでは、効果は期待できない。このように、国内外来種の問題について、自然公園法の政令改正だけでは十分とはいえず、したがって、基本方針のなかでも国内外来種および生物多様性重要な地域での対策について記述すべきである。

第1 被害の防止に関する基本構想

3. 国土保全等の役割を果たしている外来生物(緑化植物)の扱い

該当箇所
「第1、3被害防止の基本的な方針」(2頁)
「国土保全等の役割を果たしてきた特定外来生物の規制の内容を検討する際は、役割を考慮する」
意見内容
衆議院環境委員会の付帯決議において「政府や自治体が行う緑化等の対策において、外来生物の使用は避けるように努め、地域個体群の遺伝的攪乱にも十分配慮すること」が盛り込まれているように、特定外来生物の選定の際には、国土保全等の役割を重視しすぎずに、あくまでも「生態系等の被害を防止し生物多様性の確保」を目的とする本法律の精神にのっとり、指定すべきである。
ハリエンジュやのり面緑化に使われる牧草類などの緑化植物による生態系被害は広範囲に及ぶ影響があるため、将来的な在来種への転換と完全防除が不可欠である。国土交通省などの河川整備や各公共事業のなかでも、様々な防除事業や在来種への転換が行われている。しかし、郷土種とされながらも、中国産の種子が使用されるなど、遺伝子の攪乱の問題などのように課題が多く、規制の際に留意すべき課題である。

第2 選定に関する基本的な事項

4. 我が国固有の・・・固有・回復困難を削除すべき

該当箇所
「第2、2被害の判定の考え方(1)被害の判定、ア」(3頁)
「在来生物の種の存続又は我が国固有の生態系に関し、回復困難な被害を及ぼし、又はおよぼすおそれのある外来生物を選定する」
意見内容
「我が国固有の生態系」が不明確なうえ、固有性の高い生態系は、島嶼生態系や原生的な自然生態系など限られた環境のみが想定されてしまい、対象となる生物種が限定されることを危惧する。また、「回復困難な被害」という表現よって、被害が深刻な場合のみとなり、早期対応すべきものが対象外となり、予防原則の観点からもそぐわない表現である。「我が国の在来生物の種や生態系の存続に関し、被害を及ぼし」と修正すべきである。

5. 要注意リストの必要性

該当箇所
「第2、3選定の際の考慮事項」(4頁)
「社会的・経済的影響も考慮し、随時選定していく」
意見内容
知見の充実や社会的・経済的影響を重んじ慎重になるばかりに、特定外来生物の指定が先延ばしされる生物種は、問題性がないと認識され、野放しになる可能性が十分にある。随時選定するとされているが、特定外来生物の指定候補種として「要注意種」として暫定的なリストを提示し、国民に特定外来生物・未判定外来生物と合わせて国民に公表することを基本方針のなかに記述すべきである。

6. 特定の選定の際の意見聴取は、公開の委員会で行うことが必要

該当箇所
「第2、4特定外来生物の選定に係る意見の聴取」(4頁)
「委員会形式での学識経験者間の意見交換など、外来生物の特性に柔軟に対応できる形式を検討する」
意見内容
国会の環境委員会議員からの質疑、参考人招致でも話題となったように、選定・指定の判断の課程や公開性を明確にするためにも、常設の「科学委員会」を設置し、生物の分類群ごとに研究者・学会からのヒアリング結果による「生態系等の被害の評価」を公開のもとに行い、選定・指定を委員会に諮る体制を整備すべきである。

第3 外来生物の取扱いの基本的な事項

7. 第9条の適応除外

該当箇所
「第3、5放つこと、植えること又はまくことの禁止」(7頁)
「特定外来生物を捕獲又は採取した直後に放つ等の行為は本法第9条の対象とならない」
意見内容
国が防除を効率的におこなうにあたって、第9条適用の徹底が、防除の推進ならびに国民への理解啓発にも意義あるものである。しかし、捕獲直後に放つ等の行為を除外することで、例えばブラックバスを対象と考えた場合、各自治体でキャッチアンドリリースを禁止した条例や取り組みがあるなかで、矛盾と混乱が各地域で生じ、キャッチアンドリリースを助長することが予想される。よって、この一文は削除すべきである。

第4 防除に関する基本的な事項

8. 協議及び検討の場

該当箇所
「第4、2、(2)、ア協議及び検討の場の設置」(8頁)
意見内容
防除に関して、地域の情報に基づき、学識経験者、関係行政、自然保護団体、地域住民などにより、合意形成を図るための協議会を設けることが盛り込まれていることは評価でき、ぜひモデルとなる事例を積み重ねていただきたい。別途、客観的な防除の実施状況の分析・評価を行うとされているが、その結果を順応的に防除方法の見直しに活かせる柔軟性が必要である。

第5 その他重要事項

9. 未判定外来生物の申請者の立証責任

該当箇所
「第5、1、(4)判定に係る届出事項の内容」(12頁)
意見内容
未判定外来生物の判定の過程が明確にされていない。最終的に主務大臣が行うにしても、生物の性質に関する専門の学識経験者から意見を聞いたうえで判定すべきである。また、申請者の届出事項が基礎的な生態学的特性の情報提供に留まっており、申請者にも立証責任を課すためにも、リスク評価に関わる情報の提供を求めるべきである。

10. 国民の理解の増進

該当箇所
「第5、4国民の理解の増進」(14頁)
意見内容
外来種の問題解決には、一部の国民の関心や関与だけではなく、広く次世代も含めた国民の理解の浸透と協力が不可欠である。多様な場での環境教育の促進はもちろんのことだが、文部科学省と連携のうえ、学校教育の総合的学習などで具体的なカリキュラムが導入されるよう人材の養成・研修、教材の整備を検討すべきである。その際に、前提となる地域の生態系や多様性の保全の理解についての課題整理も必要である。また動植物を取り扱う業者や個人飼養者においても、外来種の逸出の危険性や根本的な外来種の問題の理解が深まるよう業界団体への働きかけや教育の機会を設けることも必要である。

11. 飼養されていた個体の受け入れ施設の整備

該当箇所
「第5,5その他(3)経過措置の考え方」(14頁)
意見内容
特定外来生物に指定された際、既に飼養している者について、諸手続に関し経過措置を設けるとされているが、飼養の許可条件の負担などから、野外の遺棄が増えることが予想される。その場合に、各地方自体などと連携し動物愛護センター等を利用して特定外来生物の受け入れ、獣医師、飼養者および機関を斡旋するなどの体制を環境省として整備することが必要である。

以上

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