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●外来種問題のギモン(2)

2004.03.01
解説

会報『自然保護』2004年3/4月号より転載


外来種の対策には新たなしくみが必要

島嶼で構成され隔離された環境にある日本にあっても、古くから外来種の輸入・利用・随伴がなされ、これまでに定着が確認されている外来種は約2000種に及ぶとされています。

外来種には、長い時間をかけて日本の自然環境になじみ、問題ないものもありますが、奄美大島のマングースが貴重な固有種などを捕食する例に見られるように、生態系等へ深刻な影響を及ぼす事態も生じています。こうした侵略的な外来種の問題は、新・生物多様性国家戦略で、開発などによる自然破壊とは別の危機として取り上げられ、自然環境行政の待ったなしの課題となっています。

外来種問題は、新規に日本に輸入しようとする種と、すでに日本に定着してしまった種の両面での対応が必要です。新規の種の輸入に対しては、その種の侵略性を事前に評価し、適正な管理ができる者以外には輸入や利用を認めないことで悪影響の予防が図れます。

しかし、すでに定着している侵略的な種は、すでに利用している者も含め適正な管理を求めるとともに、まん延している場合には防除(影響緩和)も必要となります。また、物資等に随伴して入ってくる非意図的導入も問題です。国内種の導入については、自然分布域と規制地域の関係を特定する必要があり、特に、国立公園など生物多様性保全上重要な地域への持ち込み規制等が求められます。

対策には現実的な優先度をつけて取り組む

外来種対策制度としては、侵略的な種を特定するための評価の手続き、輸入規制や適正管理を施行するための体制、防除の実施体制、まん延状況の監視調査などの取り組みが必要になります。

これらの対策を進めるには、莫大な予算、人員、専門家、科学的知見等が必要となりますが、現実的に、人やお金、知見には限りがあるので、被害が大きい種、社会的に問題となっている種など、優先度の高い種から、緊急に、かつ着実に対応を図っていくことが重要です。

また、多岐にわたる関係者の連携、協力や、基礎的調査研究、普及啓発も重要です。昨年12月に中央環境審議会から出された外来種対策に関する答申(図参照/答申は環境省のホームページに掲載)では、こうした考方が盛り込まれており、環境省では答申を踏まえ、外来種対策にかかわる法制度化の作業を進めているところです。

行政のみならず、さまざまな関係者が協力して対処、努力し、外来種問題の解決に向けた取り組みが進むことを期待しています。

(環境省自然環境局・上杉哲郎)

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▲図:中央環境審議会答申の概要


外来種対策新法、論点は実効性のある法案の中身づくり。

環境省では答申を受け、「特定外来生物の生態系被害防止法案(仮称)」を今国会に提出する。生態系、人の生命・身体または農林水産業に被害を及ぼす特定外来生物を政令で指定し、輸入、飼養、譲渡、遺棄などを原則禁止とし、個人が違反した場合は3年以下の懲役か300万円以下の罰金、法人の違反は最高1億円の罰金を科すなどの厳しい罰則を設ける案となった。さらに、まだ評価されていない外来生物の輸入制限・審査の措置なども定める方針だ。
防除では対策費用は持ち込んだ原因者に負担させることができ、防除のために国が民間の土地や水面へ立ち入り、捕獲に邪魔な立ち木などの伐採ができる。その際、土地の所有者に損失が出れば、国が補償するという規定も盛り込まれた。外来種のまん延を防ぐ、実効性のある対策法を一刻も早く制定したい。

(編集部)

■環境省自然環境局の外来種(移入種)対策のウェブサイト
http://www.env.go.jp/nature/intro/
「移入種対策に関する措置の在り方について(答申)」(2003年12月)の全文もPDFファイルで掲載。

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