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MOP5/COP10 NGO向けガイダンス

2010.10.15
活動報告

15日金曜日は、COP10初めてのNGO向けのガイダンスです。

ECOや読むべき文書の解説、主要論点の説明などを行いました。私がメインの司会進行(CBDアライアンスのミリアムさんが補佐)をして、30名近い参加者向けに半日のイベントです。

条約事務局からは、ジョグラフ事務局長とニールプラットさんがいらっしゃいました。

▲CBDキャパシティ ビルディング セッション

以下に主要な点をまとめます(司会進行しながらなので、メモ書き程度ですが)。それぞれの論点の解説者は括弧の中の方々です。

持続可能な利用(Maurizio Ferrari

生物多様性条約の目的のひとつでありながら、あまり注目されていない分野です。そのため世界的にもっと注目を集めるようにと日本政府が提案しているSATOYAMAイニシアティブについては大変好意的な見方をしていました。課題としては取り組みの評価や成果をはかる指標が作りづらいことと、慣習的な利用をどのように位置づけるかという課題に十分に取り組めてきていなかったことです。持続可能な利用については特別専門家会合を設けて検討を進めるというSBSTTAの提案がありますが、その付託事項がどのようなものになるのかも注目すべきとのことでした。

 

金融・経済的措置と生物多様性(Helena Paul

金融に関しては、気候変動枠組条約のように過剰な市場投資をまねくことを警戒する必要性が指摘されました。生物多様性オフセットという考えがあるのですが、まだ具体化まではほど遠いのですが、グローバルオフセット市場(日本の生物多様性破壊を、インドネシアで相殺する??)といった極端な方向性にいつ何時陥ってもおかしくないという指摘です。

ここは、NGOらしい議論が行われたのですが、人を動かすのは必ずしもお金だけではなく、信仰(聖なる土地を守ることへの強い思いなど)やずっと心理的な要素があるはずであることも皆で同意したところです。

 

気候変動・地球工学と生物多様性(Helena Paul

海洋施肥(貧栄養の海域に鉄や尿素を投入して植物プランクトンを発生させ、CO2を吸収させる)やバイオチャー(炭)を土中に埋めてCO2を土の中に固定するという技術?が何の科学的検証もなく行われているという問題の指摘がありました。そもそも、化石燃料に依存すること、消費エネルギーそのものを抑えることを忘れてはいけないという根本的な指摘も大切なところです。 

 

バイオエコノミーのためのバイオマス、バイオ燃料、バイオエコノミーCamilia Moreno

バイオ燃料に関しては、認証制度の欠如と「大規模化」、そして大規模化の背景にある「補助金」や「誤った政策」が絡まっていることが解説されました。EUやブラジルでは(日本でも)エネルギー需給のうち一定の規模をバイオエネルギーでまかなうことを目指して多額の投資や補助金が生まれているそうです。このことにより、これまで食料生み出す土地であった農地が、エネルギー穀物を生み出す農地にかわり、単一栽培がさらに進み、「環境に優しいもの」として奨励されるという構図が生まれているという問題です。

フィリピンでは、海藻をバイオ燃料にする計画があり、ある島を実験地に10000haの沿岸を海藻牧場?にする事業が進んでいるそうです。

 

保護地域(Holly Schrumm氏・Nigel Crawhall氏)

保護地域は、効果的な管理や周辺地域との連続性、重要地域と法的に保護されている地域のギャップを埋める取り組みといったこれまで話題になってきた取り組みに加え、先住民や地域共同体が保全してきた地域(ICCA)の認識やその取り組みの評価などがNGOにとって大事な視点であるという説明です。

 

農業生物多様性(Faris Ahmed氏)

まずは、私たちの食を提供してくれる農家の皆さんに感謝を、ということで説明が始まりました。ポイントは5つ。①小規模農家への敬意と権利を守ること、②生息域外保全(種の多様性)を保全していることに注目すること、③農業の危機とくに大規模農業燃料(アグロフューエル)による影響への注目、④農業生物多様性が持つ価値の認識、⑤国際的な生物多様性に配慮した農業への認証制度やそこに農民を必ず参加させること、などが説明されました。

 

 森林(Freidrich Wulf氏)

森林はSBSTTAからはクリーンテキスト(ほとんど合意された文書)が提出されており、大きな焦点というのはなさそう。大きく3つ、森林の多様性とその価値の認識、気候変動への適応と緩和における森林の役割、そして新戦略計画の目標5には、目標の中で森林に言及するかどうかが焦点になっていることが紹介されました。

大事な指摘としては、森林の定義で現状の共有されている定義は、自然林と植林を区別できない(樹高や、樹冠、面積だけで、自然林もそれを伐採して単一林にしても同じ評価であること)、効果的な管理の定義や判定方法がないが指摘されました。これは、REDD(森林伐採や劣化によって生じるCO2排出を削減する)が本当に生物多様性の保全に貢献するかどうかを議論するときに欠かせない要素です。

 

第8条と関連条項(Neva Collings氏)

今回の決議案には、4つの主要文書が準備されています。Sui generis systemという先住民や地域共同体の生物多様性に関する慣習法と国内法体系との整理、タガワリヒガイドラインという各国が先住民や地域共同体の問題を扱う際の倫理規定、先住民地域共同体の効果的参加メカニズム、そして、作業計画の検討(先住民地域共同体に関する指標の合意)などがあります。

 

アクセスと利益配分(Harmut Meyer氏)

ABSについては現在進行形の議論ということもあり、主要な論点をあげてもらいました。遺伝資源の定義や利益配分の対象となる利用、遵守メカニズム(その具体性)、遡及適用(いつの資源利用をこの議定書の対象とするか、議定書の発効以降、条約の発効以降、それとも、大航海時代???)、遺伝資源に関係する伝統的知識の取り扱いなどです。

道家哲平/保全研究部)

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