COP10 難産の末の「愛知ターゲット」採択は最大のチャンス!
新たな生物多様性保全の戦略計画の目標として決定した「愛知ターゲット」。
2020年までの生物物多様性の保全の計画は、「生物多様性の損失をとめるために効果的緊急的な行動をとる」というミッション(=使命)が定まり、保護区など個別の目標が設定されました。
本質的な議論よりは、各国の利害(ABS議定書)と資金(海外援助)など常に途上国と先進国での対立の構図が付きまとい、最終的な合意に至るまでに、抽象的な表現にとどまる目標や、野心的な表現が薄れていく目標もありました。
最終日まで残った大きな対立を調整し、難産の末に愛知ターゲットをまとめた議長国日本は、ここに記されたそれぞれの目標が達成できるように、実行策を育て上げる責任が一層求められるでしょう。
一方で、辺野古の普天間基地問題(沖縄県)や上関の原発計画(山口県)など直面する日本国内の開発問題に対して、この「愛知ターゲット」は解決の道を提示できるのでしょうか。
日本政府は、世界で合意されたこの目標の決議文書を日本語に翻訳し、解釈して政策に当てはめるときに、目標を達成するための手段としてあいまいなものにしてはならないのです。
また、実際に目標が達成されるために政策がしっかり行われているのかどうか、監視し、修正を加えていくのも市民社会の重要な役目です。
そして、政策の枠組みだけではできない生物多様性保全の取り組みを、より一層加速させることも、社会全体の使命となったのです。
2020年までに生物多様性の危機の崖っぷちから脱するためには、これまでのように個別縦割りな施策や、個人の努力に依存するような社会構造のままでは、間に合いません。
この愛知ターゲットの採択は、政治も社会も視点や行動を大転換し、大きくステップチェンジする最大のチャンスなのです。
(大野正人・保護プロジェクト部)