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海草移植実験は明らかに失敗。埋め立て事業はただちに中止すべき」

2002.11.13
要望・声明

報告書はこちらからダウンロードできます。


平成14年11月13日

沖縄及び北方対策担当大臣 細田 博之 殿
沖縄県知事        稲嶺 惠一 殿

財団法人 日本自然保護協会
理事長 田畑 貞寿

泡瀬干潟(中城湾港(泡瀬地区))埋立事業及び海上工事着工に対する意見書

2002年10月8日、沖縄総合事務局は、海草藻場移植について「手植えによる工法で移植は可能」とし、泡瀬干潟埋立事業の海上工事を着工した。しかし、これまで開催されてきた環境監視・検討委員会では、「手植え移植」についてはほとんど検討されておらず、公表資料に示された実験結果は、著しく科学的根拠を欠いているものである。9月30日に開催された環境・監視検討委員会においても、委員から海草移植について多くの疑問、問題点が指摘されている。さらに、環境影響評価書で実施するとしているクビレミドロやトカゲハゼ、干潟・浅海域生態系への環境保全措置についても、十分な科学的根拠に基づいて説明されたものとはなっていない。そのような状況にもかかわらず、突然着工したことは環境影響評価法や国民を無視する、あってはならない行為と言わざるを得ない。

このような沖縄総合事務局及び関係当局の態度に強く抗議する。

当協会は、海草藻場移植実験の現況を評価するために2002年10月6-7日、泡瀬干潟の自然藻場、移植藻場、海草採取地において科学的な方法により海草の生育状況、底生生物の生息状況、底質の調査を実施した。その結果、移植藻場、採取地の自然環境は、明らかに自然藻場に比べて劣化していることが示された(別添調査報告書参照)。

特に、機械化移植による大規模な底質の撹乱が、移植地においても採取地においても、海草や底生生物の生育・生息環境に大きな影響を与えていることが明らかになった。つまり、海草移植実験は決してうまくいっていないばかりか、埋め立て以前に、実験によって、泡瀬干潟の豊かな海草藻場生態系を、移植地と採取地において二重に破壊したことが明らかになったのである。さらに実験による周辺の良好な海草藻場生態系への影響も懸念される。

また、移植実験では既に海草類が疎生している場所や濃生域に隣接した場所を移植地としているが、これらは既存藻場の一部であることから移植地としては全く不適当である。米国やカナダでは、開発行為に伴い代償措置として海草の移植を行うのであれば、ノーネットロス(Nonet-loss)の原則に基づき埋め立てによって失われる藻場と同等の新たな海草藻場を創出しなければならないとしており、既存藻場への移植は代償措置とは成り得ないものといえる。

以上のことから、当協会は内閣府政策統括官(沖縄担当)、沖縄振興局、沖縄総合事務局及び沖縄県に対し、以下の通り要望する。

  1. 海草藻場の移植は科学的にその技術が確立されておらず、今回の海草移植実験も明らかに失敗である。またクビレミドロやトカゲハゼ、干潟・浅海域生態系への環境保全措置についても、十分な科学的根拠に基づいて計画されていないことから、海草の移植実験及び工事をただちに中止すべきである。
  2. これまでの海草移植実験により撹乱した移植地及び採取地の海草藻場生態系については、専門家およびNGO、市民等の参加を保障した公開のモニタリング委員会(仮称)を設置し、科学的な手法によってモニタリングを実施した上で、海草藻場の復元を図るべきである。
  3. かけがえのない泡瀬の干潟・浅瀬の自然環境保全のため、埋立事業を中止すべきである。
    そして、その代替措置として、環境学習の拠点やエコツーリズム等、泡瀬干潟の自然環境を活かした地域づくりについて、情報公開のもと住民参加で検討し、合意形成を図る場を設けるべきである。

【問い合わせ先】
日本自然保護協会 保護研究部
担当:開発法子・廣瀬光子

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