国際照葉樹林サミットin綾~保全ネットワークの輪が大きく広がりました。
保全研究部の朱宮です。
5月21日、22日宮崎県綾町で「国際照葉樹林サミットin綾」が開かれました。
このサミットは、前田穣綾町長を実行委員長とする国際照葉樹林サミット実行委員会(九州森林管理局・綾町・NACS-J・てるはの森の会・総合地球環境学研究所・ひむか維新の会・宮崎県木材・青壮年連絡会)が主催しました。
実は、昨年の生物多様性条約COP10の前に、照葉樹林における保全活動を国内外にアピールしようと綾の照葉樹林プロジェクトのメンバーを中心に企画されていましたが、口蹄疫の影響により1年の延期となっていました。
当日は雨交じりの天気でしたが宮崎県内だけでなく中国、韓国、ブータン、沖縄、屋久島、大隅、対馬などから延べ530人もの参加があり、会場は朝から熱気につつまれました。プログラム1日目は基調講演、4つのテーマの分科会、全体討議、大会宣言の採択が行われ、2日目は6つのコースに分かれて現地見学会が行われました。
特に綾町は今年度ユネスコのMAB(人間と生物圏計画)の生物圏保存地域(ユネスコエコパーク)の登録申請を目指しているので、第1分科会(照葉樹林を活かした地域づくり)としてエコパークを使った地域づくりに関するテーマも加わりました。
大澤雅彦教授(マラヤ大、NACS-J理事:写真左)の基調講演では、照葉樹林が第三紀の遺存的な植物群であり現在では東アジアを中心として限られた地域にしかみられないこと、生産力が高い地域であり、古くから人が定着し農業を営み、特徴的な文化を形作ってきたこと、現在は植林など人の利用により原生的な自然林は減少してしまったことなどが説明されました。
午後は4つの分科会が行われ、最後に全体討議が行われました。各分科会の説明がコーディネーター(河野耕三氏/綾町、大澤雅彦教授/マラヤ大、湯本貴和教授/総合地球研)から発表され、松田裕之教授(横国大)、岡村和哉課長(九州森林管理局)を加えて議論が行われました。
東日本大震災後の開催となり、エネルギーも含めた我々の暮らしのあり方に関する議論や、地域づくりにエコパーク登録を活かすためには地域の市民や関係者が努力を続けて行く必要があることなども話題に上がりました。
最後に照葉樹林の保全を進め、伝統的な知恵を発展的に継承し、持続可能な利用を進めていき、地域の保全活動のネットワークを広げていくことを確認する
大会宣言を採択しました。さまざまな地域の専門家、行政、NGO、市民が共通の目標を確認できたことが最大の成果であったと感じています。今後、他の地域で継続的にサミットが開催される予定です。