絞り込み検索

nacsj

ありあけ大調査 第2回結果速報

2002.07.10
活動報告

日本自然保護協会(NACS-J)
有明海漁民市民ネットワーク

 

1.はじめに

有明海における貧酸素水塊の発生過程を解明することを目的とした「ありあけ大調査」の第二回調査が、6月22日に行われました。当日は、天候が荒れ、強風と波の高い中での調査でしたが、予定していた77地点の全てで無事、調査を行うことが出来ました。本報告は、第2回調査結果のうち、海水中の酸素濃度、水温、塩分の結果を速報としてまとめたものです。なお、予定していた調査地点と実際に調査を行った位置に若干のずれがありますが、本速報ではその修正を行っておりません。よって、後日、正式に公表するデータでは、調査地点の修正があることと思いますがご了承下さい。

 

2.調査方法

6月22日の第二回調査では、佐賀県南川副と大浦、福岡県大和町、長崎県島原と有明町、熊本県荒尾と滑石から、32艘の漁船により有明海全域の合計77地点で調査を行った(図1)。第一回目の調査と同様に、調査開始は各地域の満潮時刻±1時間の間とし、朝5:00~9:00の4時間で全調査地点における作業は終了した。

 調査地点から持ち帰ったサンプルは、佐賀県大浦、長崎県島原、福岡県大和町の3カ所の分析拠点に持ち込み、海水のろ過処理とウインクラー法による溶存酸素濃度の分析、塩分(導電率換算による)の測定を行った。第二回目の調査には、合計16名の市民の参加があり作業にあたった。

 

3.調査結果

1)水温
調査地点における表層と底層(海底から0.5~1m)の水温を図1に示した。なお、調査地点とその番号、各調査地点の担当地域に関しては、第一回調査速報の図1を参照して頂きたい。

第一回調査の結果と比較すると、全地点において水温が1~2℃ほど上昇する傾向が見られるが、その一方で、表層と底層の水温差が小さくなっている。第一回目(6月8日)の調査では、水深の深い沖合の調査地点において表層と底層で2~3℃程度の水温差が見られ、水温成層が発達しつつあることが伺われた。しかし、第二回目の調査では、諫早湾湾口付近で表層と底層の水温差が1℃程度、沿岸域や浅海域の調査地点では水温差が殆ど見られていない。これは、調査当日は悪天候であったため、強風により海水の鉛直混合が促進されたことによると考えられる。

2)塩分
塩分は水温と同様に、第一回目の調査結果と比べ、殆どの地点において表層と底層の塩分差が小さくなる傾向が見られる(図2)。本結果からも、調査当日の強風により海水の鉛直混合が促進されたことが伺える。

3)溶存酸素濃度
表層の酸素濃度は殆どの調査地点において、6~7.5mg/Lの範囲であり、飽和酸素濃度(海水1リッターに溶けることができる酸素量)の85~110%とほぼ飽和状態にあった。また、諫早湾湾央の地点8、島原沖の59,62地点では、飽和酸素濃度の120%であり過飽和状態となっていた。一方、矢部川河口の地点29において、3.6mg/Lと低い値が観測された。これは、水温、塩分ともに表層と底層で差が見られなかったことから、強風による底泥の巻き上げが海水中の酸素の消費をもたらしたのだろうと考えられる。

 

底層の溶存酸素濃度は、殆どの地域において5~7mg/L(飽和酸素濃度の65~95%)の範囲にあり、第一回目の調査結果と比較すると、全体的に底層の溶存酸素濃度が上昇している。特に諫早湾内では、第一回目の調査では北部排水門から湾央にかけ、溶存酸素濃度が4mg/L以下の底層の貧酸素化が観測されたが、第二回目の調査では、湾央の地点8で、4.15 mg/L(飽和濃度の57%)が観測されたのみで、底層の貧酸素化が解消しつつあると言える。

一方、矢部川河口付近の地点29および33では、それぞれ3.87mg/L,3.14mg/Lと底層酸素濃度の減少が観測されている。地点29では、表層においても溶存酸素濃度の低下が見られたことから、底泥の巻き上げによる海水中の酸素の消費が生じていると考えられる。しかし、地点33における底層溶存酸素濃度の低下は、地点29に連動しているものか、または独立して生じているものか現時点では判断できない。今後も注意深く観測を行う必要がある。

4.考察

6月8日に行った第一回「ありあけ大調査」により、諫早湾内では既に底層の貧酸素化が始まっていることが明らかとなった。一方、第二回目の調査では、調査当日の強風により、諫早湾内においては底層の溶存酸素濃度の回復が、また矢部川河口付近では溶存酸素濃度の低下が観測された。

昨年夏季に諫早湾を中心として観測された底層の貧酸素化は、8月中~下旬に接近した台風の影響により、海水の混合が生じ解消したとされている。今回の調査結果に関しても、風向・風力などの気象データを含めて今後の解析を進めてゆく必要がある。

ありあけ大調査では、8月下旬まであと4回の調査を予定している。現在の梅雨に伴う塩分成層の発達などにより底層の貧酸素化が進行してゆくと考えられるが、今後も継続して監視を行う。

 

調査代表者:          村上哲生(名古屋女子大学)
程木義邦(日本自然保護協会)
羽生洋三(有明海漁民・市民ネットワーク事務局)

前のページに戻る

あなたの支援が必要です!

×

NACS-J(ナックスジェイ・日本自然保護協会)は、寄付に基づく支援により活動している団体です。

継続寄付

寄付をする
(今回のみ支援)

月々1000円のご支援で、自然保護に関する普及啓発を広げることができます。

寄付する