ニホンカワウソが「絶滅種」指定。ハマグリやゲンゴロウなど身近な生物も絶滅危惧種に。
環境省は8月28日、絶滅の恐れのある野生生物の「レッドリスト」を見直し、ニホンカワウソを絶滅危惧種から「絶滅種」に指定するなど、改訂版を発表しました。新たに8種が絶滅種に指定され、身近な生き物のハマグリやゲンゴロウなどを含む419 種が絶滅危惧種となってしまいました。
ニホンカワウソは河川や湖沼などに棲み、河童のモデルになったといわれるほど、かつての日本では身近な生きものでした。
しかし、毛皮目的の過剰な捕獲や、河川の護岸工事などによる生息地の減少、餌資源の減少などにより個体数が激減し、確かな生息情報は、1979年の高知県での目撃例が最後となっていました。
会報『自然保護』No.29では、森川国康さん(当時・愛媛大学文理学部)が愛媛県におけるカワウソ保護の問題について論じています(PDF一部抜粋)。
1963年当時、すでに全国的な目撃情報はなくなりつつあり、生息情報が得られるのは愛媛県下の海域ばかりとなっていたそうです。
主に河川を生息域とするカワウソが海域ばかりで確認されることについて、森川さんは「開拓されてきた河川では、生息の場を失い人跡のおよびがたい海岸避地にかろうじて生き残っているということを示していると思われる」と述べています。
当時は、まだ20頭程度は愛媛の海域に生息しているのではと推定されていました。
1962年、生息情報が確認されていた愛媛県では、三崎半島以南に3地区のカワウソの特別保護区を設定。しかし、保護区内でも護岸工事や道路工事が進み、生息地の環境破壊は止まらなかったのです。また、カワウソのような動物は行動範囲が広く、一部の生息域だけを保護区に指定しても生息環境を守ることができませんでした。
また、1991年9月号の会報『自然保護』No.352でも、写真家の田中光常さんが撮影された、愛媛県御荘での1965年に撮影されたニホンカワウソの姿にあわせ、小原秀雄NACS-J顧問(当時理事長)の『「種」が消えてゆくことの意味』を解説しています。
ニホンカワウソ~「種」が消えていくことの意味~
小原顧問は「精妙な自然界のバランスとその自然な歴史的変化は、いっそう回復不可能なのだということを、私たち人間は忘れてはならないのです。」と、種が絶滅していくことの重大な損失を述べています。
この3~40年日本の生物多様性は加速度的に失われつつあります。今回のレッドリストの改訂版発表は、その結果を目の当たりにすることになりました。
一人一人が何ができるかを考えるきっかけにしたいと思います。