第5回IUCN世界自然保護会議(WCC)―大きな海洋保護区の悩みごと
保護プロジェクト部の安部です。
大きな海洋保護区を持つ国や地域で作っているネットワーク「Big Ocean Network」の主催で、
ノレッジカフェが開かれました。
ハワイ、マレーシア、南太平洋などさまざまな海の保全に取り組んでいる参加者が7名集まりました。
(右写真:ノレッジカフェ「海洋保護区は大きい方が良いのか?」)
この日のテーマは「海洋保護区は大きい方が良いのか?」でした。
先週、クック諸島で世界最大の海洋保護区が指定されたばかりですので、
参加者の話題はそこから始まります。(http://www.cnn.co.jp/fringe/35021310.html)。
その面積は何と100万平方キロメートル。ちなみに日本海とほぼ同じ広さです。
長いことオーストラリアのグレートバリアリーフが世界最大の大きさの海洋保護区でした。
その面積に関する記録が2006年にハワイに最大の海洋保護区が設定され、
昨年末には再びオーストラリアのコーラルシー
の設置で更新され、今回のクック諸島の件でさらに世界記録が更新されたことになります。
最初の質問には参加者全員が「大きい方が良い」と答えました。
しかしながら、ファシリテーターが次々と「大きな保護区を抱えることで生じる難しさは?」
「小さな海洋保護区にはない、大きな海洋保護区特有の良いことは何か?」と質問を投げかけると
参加者の表情も複雑になってきます。
【海洋保護区大きいことの利点】
*生き物の生活史全て・生態系や地形などを丸ごと守ることが出来る
*人の注目を集めやすい
*政治を動かしやすい
*環境教育につながりやすい
*多くの人が関わることが出来る
【海洋保護区が大きいことの欠点】
*パトロールにかかる時間・人手・資金を維持するのが大変
*特に発展途上国にとっては大きな負担となる(時間・人手・資金)
*海洋保護区内の地点Aから地点Bへの移動だけで時間がかかり、地域の人たちとコミュニケーションが取れない
*地点Aと地点Bの人たちもお互いのつながりを感じることできない
これらに対し、「ハイテク技術を使い、国・NGOなどの専門家がフィールドに行かなくても
モニタリングができるようにならないのか?」「ハイテク技術ではデータは得られるだろうが、地域の人たちとコミュニケーションを取ったことにはならない」「小さな保護区できちんと保護をしていけば、それらをつなげることが出来る。その積み重ねが結果的に成果につながる」「海洋保護区の大きさばかりを争っていても仕方ないのではないか」などさまざまな意見が出ました。
ファシリテーターからの最後の質問は「大きな保護区が世界の海の保全に貢献できるようにするにはどうすれば良いのか?」と難しいものでした。
たどりついた結論は上記の繰り返しとなりましたが「人の注目を集めやすい」「生態系や地形を全て保全できる」という2点となりました。
日本の海洋保護区はとても小さいです。早く海洋保護区の大きさで悩んでみたいものです。
(左写真:別の時間帯ではパビリオンという少し開けた場所で北極や南極の海の議論が進んでいます。)