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「岩菅山の自然環境に手をつけず、既設のスキー場を使用を」

1989.12.20
要望・声明

長野冬季オリンピック招致計画に関する岩菅山山域の保護についての意見書


平成元年12月20日

長野冬季オリンピック招致計画に関する岩菅山山域の保護についての意見書

長野冬季オリンピック招致委員会は、1998年冬季オリンピックの招致にあたっては「オリンピック競技施設の整備に当たっては、自然と共存するオリンピックを第一に、自然環境の保全については十分な配慮を行う」ことを基本的な姿勢のひとつとしてきました。

当協会は、これまで長野県及び招致委員会等により提出されてきた種々の知見を自然環境保全の専門的機関としての立場から検討した結果、次の結論に達しました。

「岩菅山の自然環境に手をつけず、既設のスキー場を使用してアルペン競技を行うよう工夫されたい。」

岩菅山山城は高標高地を除いて国立公園普通地域ですが、これは上信越高原国立公園志賀地区の指定時期が初期のものであったためであり、周辺に比ペて開発の進んでいない現状からすれば、特別地域とみなしてもよい自然環境です。特に、頂上付近、稜線を含む高標高地の特別地域は、志賀山同様に特別保護地区とすべきものと思われます.早急に地種区分の見直しを関係当局ではかるとともに、併せてMAB計画にもとづく生物圏保護区の拡大もすペきものと判断します。

また魚野川原生流域は、わが国に残された数少ない原生的自然環境にあたるため、林野庁の森林生態系保護地域、もしくは環境庁の原生白然環境保全地域として広域かつ厳正な保護をはかる必要があるものと思われます。

仮に、調査委員会が付記した11項目の条件で岩菅山変更案(裏岩菅山案)を選択したとしても、高標高地を含む新設計画である以上、自然環境に大きな影響を与えることは避けられないと判断します。またスキー場を新設後に完全復元をするという条件をつけたとしても、1972年の冬季オリンピック会場となった北海道・意庭岳の復元状態から明らかなように、緑化はできても復元は極めて困難であるといわざるをえません。

オリンピック開催にあたって自然保護に十分配慮すペきことは、すでに国際世論となっています。

これまでに国内でも日本生態学会、日本哺乳類学会をはじめとして、さまざまな自然保護団体、山岳団体などからも、アルペン競技のための岩菅山周辺の新設スキー場開発に反対する意見書、要望書が出されていることは周知のとおりです。

従って当協会の見解は、岩菅山山域のコース新設を妥当とする十分納得のいく科学的根拠が得られない以上、わが国の自然環境保全のうえからも、長野県下の既存施設を十分活用してオリンピック開催の道をさぐるペきであると考えます。

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