海洋基本計画が発表になりました。
~海洋の開発・利用による富と繁栄?!
保護プロジェクト部の志村です。
突然ですが、日本地図を思い浮かべてみていただけますか?
おそらく、陸地の部分だけを思い浮かべる方が多いと思うのですが、
領海まで入れた日本はこんな形になっています。(下図)
国土面積では世界第61位ですが、領海面積では世界第6位の、堂々たる海洋国家が日本なのです。
そんな我が国の、海洋政策をまとめた「海洋基本計画」が、4月26日に閣議決定されました。
閣議決定の前に、インターネットなどを通じて意見を求められていたので、NACS-Jも4月7日に意見を提出していたものです。
NACS-Jの海洋基本計画に対する意見
案は、開発優先で保全とのバランスを著しく欠いていたため、ーーー本原案は、開発・利用のメリット部分だけが強調されており、政府全体で海洋に関する施策を進める基本計画としては、あまりにも偏った内容と言わざるを得ない。総論において、海洋開発や利用の促進などに触れる前に、「環境保全の優先とその政策の推進」をかかげ、環境の保全を前提とした海洋開発とその利用を述べるべきである。ーーー などの意見を提出しました。
結果は…。
残念ながら、開発優先の姿勢は変わらず、かえって強調された部分もあるような内容になっています。
海洋の利用による富と繁栄、海底の鉱物資源を官民挙げて開発、地震・津波などに堤防など海岸施設を整備、といった言葉が続いています。
先日は、富士山が世界遺産に推薦されたことがニュースになりましたが、自然は単なる資源ではなくわたしたちの精神世界にも重要であり、上手に使えば価値が減らない資源です。
そして、陸上より海が遅れているのは、開発や産業だけでなく保護政策も同じです。
自然保護のルールを決める前に、誰も使っていないから、どんどん開発!という姿勢は、将来に禍根を残すことになります。
計画案からの大きな変更はありませんでしたが、追加された文章・項目について何点かご紹介しておきます。今の日本政府が、海をどのように捉えているかよくわかるのではないかと思います。
この計画がどのように具体化されるのか、環境への配慮が本当にきちんとなされるか、全国の会員の皆さんと手分けをして、注意していきたいと思っています。
(案)
産業化を念頭に官民を挙げた開発体制の整備等に取り組む。
↓
(6頁/海洋産業の振興と創出)
産業化や海外における各種のプロジェクトへの参画を念頭に官民を挙げた開発体制の整備等に取り組む。
(案)
○資源開発の産業化を推進するため、関係府省の連携の下、海洋エネルギー・鉱物資源関係の調査・探査・研究開発等の成果を集約するとともに、我が国の有する他の分野の先端技術を結集して資源開発に活用する。
↓
(14頁/海洋資源の開発及び利用の推進)
○資源開発の産業化を推進するとともに国際競争力を強化するため、関係府省の連携の下、海洋エネルギー・鉱物資源関係の調査・探査・研究開発等の成果を集約するとともに、我が国の有する他の分野の先端技術を結集して資源開発に活用する。
(案) <項目なし>
↓
(14頁/海洋資源の開発及び利用の推進)
○資源供給国に対する政府一体となった働きかけ、資源国に対する協力のパッケージ化や、資源権益獲得に対する資金供給の機能強化等を通じ、官民のリソースを最大限いかして資源の確保をより戦略的に進める。
(案) <項目なし>
↓
(18頁/水産資源の開発及び利用)
○鯨類について、科学的根拠に基づく持続的な利用の実現に向け、鯨類捕獲調査の安全な実施を図るとともに、我が国の立場に対する国際的な理解の拡大に引き続き取り組む。
海洋基本計画の全文は下記サイトで読めます。
総合海洋政策本部