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日弁連主催のシンポジウム「公共事業とわたしたちの未来」に参加しました。

2013.07.07
活動報告
icon_abe.jpg保護プロジェクト部の安部です。
日本弁護士連合会が主催したシンポジウム「公共事業とわたしたちの未来vol.2~「国土
強靭化」と「被災地復興」のいま、「新しい」公共事業と「地域経済」のこれから~」
http://www.nichibenren.or.jp/event/year/2013/130706.html)に参加しました。
 
西島和さん(日弁連公害対策・環境保全委員会)と五十嵐敬喜先生(法政大学)の基調講演「国土強靭化と公共事業の行方」に続き、今日は現場からの報告として畠山信さん(NPO法人 森は海の恋人)とつる祥子さん(自然観察指導員熊本県連絡会会長、環境カウンセラー)からご報告がありました。
 
 
畠山信さんの特別報告「被災地の復興と防波堤整備について」:
最初に気仙沼・小泉地区に予定されている高さ14.7mの防潮堤の紹介がありました。
「気仙沼では早くから防潮堤反対の動きはあったものの、防潮堤に賛成する人がいることも事実。 
防潮堤に賛成する人は土地を売りたい人が多い。防潮堤では人の命は守れないが、非公開で首長のみが対象の住民説明会等の会議が行われ、手続きはどんどん進んでしまう。また住民のなかには、勉強しない人も多く、勉強しない人は意見を言わないので合意したとみなされてしまう。」
 
「防潮堤は海から50m以内に建てなければいけないという決まりがあるが、海から50m以内の地盤は非常に軟弱である。その補強のため地面に鉄板を入れる。つまり地下水が止まり、それがどのような影響を海に与えるのかは未知数であり、森里海の連続性が遮断されることが心配。」
 
「気仙沼市では防潮堤を勉強する会を立ち上げて、勉強会を重ねている。詳細はホームページをご覧いただきたい。http://seawall.info/index.html
 みなさんにお願いがある。見守り続けて『評価』して欲しい。何かをして欲しいという
よりは評価が欲しい。お金をかけても大きな構造物を建てることが正解ではないということを、次の世代に、次の震災が来ても困らぬように、伝え続けたい。」
 
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▲”森は海の恋人~The forest is longing for the sea, the sea is longing for the forest”と書かれたスライドで講演する畠山さん。
 
続いて、つる祥子さん(自然観察指導員熊本県連絡会会長、環境カウンセラー)のご報告「つくらない公共事業 荒瀬ダム撤去で川に魚が戻ってきた」がありました。
「ダムが出来て、アユをはじめとする川の恵みが減り、50年間闘い続けて、やっとダム撤去に成功した。裁判や住民の要請行動などを行い世論を作っていった。翌日から撤去工事が開始されるという平成24年8月31日に、ダムを仲間と見に行った。普通ならば50年間見続けてきた自然がなくなるということに寂しさを感じるものだが、50年間がんばってきた70代、80代の人たちが本当にうれしそうにしていたことが印象に残った。
 
ダムが撤去され、子供も大人もアユも川に戻ってきた。うなぎの漁獲高もあがってきた。 上流の森林の荒廃や、そして、ありとあらゆる場所が護岸のコンクリート化が急ピッチで進んでいるなど、さまざまな課題はある。しかし、このような水が循環する流域圏を取り戻す公共事業が必要だと、思う。荒瀬ダム撤去を全国の河川政策を考えるきっかけに!」
 
●ブログ「荒瀬ダムと川辺川ダムの現場から」
http://kumagawa-yatusirokai.cocolog-nifty.com
●facebook :http://www.facebook.com/arasedam
第二部のパネルディスカッションではさまざまなことが話されましたが、印象に残った2点をお伝えしましょう。
 「対立構造に伴う困難は?」という質問に対し、つるさんの回答は次の通りでした:
「勝ったとはいえ、すぐに勝ち取れた訳ではない。何十年もの努力があり、出来てしまった人間関係のしこりはまだ完全に解消したとは言えない。ダムはいろいろなものを分断するが、住民の分断が一番罪が大きい。自分が出来る反対運動をしていき、仲間を広げて連携を取り、ときには喧嘩をし、疲れたら休んで、あきらめずに広げて、世論を形成していくことが重要。議員を味方につけることが必要」、そして「 市民参加の基本は情報公開。日本自然保護協会(NACS-J)の協力でクマタカの調査を行い、そのデータに役に立った」と。
 
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▲パネルディスカッションで話すつる祥子さん
 
また「災害対策をどう考えるか?」の問いかけには、畠山さんもつるさんも、「今の人は自然が読めないのが問題。水が次にどこに来るか読むというノウハウがない。海を知らない人ほど堤防などの構造物に頼ろうとする」とおっしゃっていました。
 
難題ばかりですが、弁護士の先生がまとめていたように「住民の主体的な参加が必要。しかし制度の方の整備も必要」です。NACS-Jもつるさん達のように粘り強く活動し、世論を作っていきたいと思います。

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