おいしい鮎を食べて川を救おう 「尺鮎」トラスト
会報『自然保護』No.455(2001年4月号)より転載
九州・川辺川ダム計画の、大きな関門となっていた漁業権問題を巡り、国土交通省は、16億5000万円の補償金で漁業権を売り渡してほしいと漁協に交渉を持ちかけていた。
しかし、川辺川が生み出す鮎の売り上げ額は末端価格にすると年間19億円といわれている。日本三大急流で知られる球磨川、特に球磨川の支流川辺川で育つ鮎は味・香り・姿と三拍子揃い、全国で高値で取り引きされているのだ。
そこで、補償金で川を買おうとする動きに対抗し、天然鮎の定期購入者を募って川を守ろうというユニークな活動を地元の女性たちが始めた※。目標数3万人。これだけの人が1年間に1キログラムの鮎(平均市場価格6000円、変動あり)を買えば、補償金と同じ16億円を8年間で生み出す計算になるという。
2月28日に開かれた球磨川漁協通常総代会の結果、川漁師さんたちは国土交通省との漁業補償交渉を否定。これによって、本年度内のダム本体工事は、なんとか踏みとどまった。ダムによって危機に瀕する川や海の幸を全国に紹介し、定期購入者を確保することで、永続可能な漁業を支援し、川や海は誰のものかを考えるきっかけにしたいというのが呼びかけ人原さんらの願いだ。
※呼びかけ人「川辺川を守りたい女性たちの会」
(志村智子・編集部)