国立公園のあり方を問う
保護プロジェクト部の辻村です。
先日、会員の方から上高地の話題でお便りを頂きました。
6月19日にかなり大規模な出水があり、徳沢仮設橋という仮設の橋の左岸側取り付け道路が大きく破壊されていたとのことでした(写真)。
このこと自体は自然の作用ですので問題はありません。問題はこの場所がどういう場所で、道路がどういう道路なのかということです。
上高地は中部山岳国立公園に指定されており、この場所がその中でも最も厳正に自然を保護することが求められている特別保護地区になります。また、今回破壊された道路は、砂防工事用に河道内に造られた仮設の道路で公園計画に位置付けられたものではありません。
ところが実際には、公園計画に位置付けられた公衆便所などの集団施設の維持のためにも利用されています。ですから本来は公園計画にきちんと位置付けられるべき道路です。事実上必要な仮設道路ですから復旧作業が行われることになると予想できますが、このまま法的な位置づけがうやむやのまま作り直されるのは許されないことではないでしょうか。
そもそもこの仮設橋や道路については、今回のような侵食作用が発生した際に下流域の河床を上昇させる悪影響の要因となり、上高地の自然環境保全上問題があることを研究者から指摘されていた場所です(上高地自然史研究会)。
まずは早急に、関係者間で国立公園の特別保護地区に相応しい道のあり方を検討し、公園計画に位置付けられたものにしていくことが先決です。その際重要なのは、自然環境の保全に影響がない方向性でなければならないと思います。