シンポジウム「三陸の未来を語ろう~防潮堤問題から日本の未来を考える~」に参加してきました。
保護プロジェクト部の安部です。
8月4日に行われたシンポジウム「三陸の未来を語ろう~防潮堤問題から日本の未来を考える~」(環境修復機構主催)に参加しました。
現地からの報告として気仙沼小泉に住む高校生の阿部正太郎さんからの報告と、南三陸町歌津地区に住む漁師の千葉拓さんから報告がありました。
阿部さんからは「気仙沼市小泉地区からの報告」と題し、震災前後の小泉の様子や、ご自身の思いが伝えられました。
幼いころから海に親しんできて、今は、地域のよさを発見し、商品を開発するような活動もしている。「気仙沼の小泉地区は、すごいところだ。海・河・風があり、サケが遡上し、メダカがいる田んぼがあり、アサリやハマグリも採れる、こんな場所が他にあるだろうか」と思うほど大好きな小泉。
震災後に海岸線が変わり、出てきた計画は14.7mの大きさの防潮堤。これに対しては、まだ早すぎるとのこと。「まずは、震災で失われたつながりをもう一度つむぎたい。今までのようなお祭りや運動会を再開させることが必要。これには時間を必要とする。今はまだ、人の心も頭も防潮堤について考える時期になっていない。説明会でなされる説明・用語はとても難しい。また説明会で反対しないことが、賛成を意味してしまい、計画が進んでしまうということを小泉の人は知らない。僕は、小泉ならではの自然を活かした魅力ある活動を進めたら良いと思う。大好きな小泉をいつまでも」
千葉拓さんからは、プロの漁師の目で見て来た鋭い分析とともに、地形の変遷、水の流れの変遷を話してくれます。
「今回の計画の件は一方的に県から通知がきた。コミュニケーションが全く足りていない。一方的過ぎる。その通りに計画を進められてしまったら築き上げた地域の人間関係も分断されてしまう。セットバックしてできるだけ多くの砂浜を取り戻したら良いなどと若手の漁師で話し合っている。ちゃんとした智恵を学ぶ場所を作り、アサリ、シロウオ、ウナギが獲れる、大切な場所にしたい」と慣れないパワポを操り、熱弁する千葉さん。
専門家からの報告として、横山勝英先生(首都大学)より「環境水理学から見た宮城県沿岸部の防潮堤計画~森里海連環から考える」と題し、行政の縦割りが招いている事態の深刻さや一律に全国の沿岸に同じ基準が適用され進められる工事の問題点などのお話しがあり、廣瀬俊介先生(東北芸術工科大学大学院)より「生態学的環境デザインにもとづく小泉地区再生試案」と題したお話しがあり、今ある自然を活かした案が提示されました。
パネルディスカッションではなぜ防潮堤が環境アセスの対象にならないのか、海岸線ぎりぎりに構造物を作ることをやめた方が良い、絶対に壊れない構造物を作るのではなく、造り直せるような、壊れることを前提にした発想が必要、このままでは三陸復興国立公園(環境省)を作っても道から降りたら自然海岸のかわりにコンクリートの堤防がある、東京に住む人たちが協力できること、など多くの意見が活発に飛び交いました。
(写真左から白鳥さん(環境修復機構)、滝沢さん(環境修復機構)、廣瀬先生、横山先生、阿部さん、千葉さん)