「司法の判断はあまりに時代おくれ」「当事者適格の範囲の拡大を」
(財)日本自然保護協会
常務理事 吉田正人
- 奄美の自然の権利訴訟は、人間がものを言えない自然や野生生物の代弁をして訴訟を起こすというわが国でははじめての運動であり、結果はともかくとして、社会に対するアピール力の高さによって、日本の生物多様性をおびやかすゴルフ場などに警鐘を鳴らした意義は大きい。
- 原告適格が認められなかったことはたいへん残念だが、自然の価値や保全の一般的な義務を認め、自然の代弁をするという訴訟の意義を認めた点では、一歩前進したものといえる。
- 原告適格を認める範囲の狭さという点では、すでに環境影響評価法など新しい法律では、誰もが当事者適格を有するように時代認識が変化している。これに対して、今回の訴訟に限らず公有水面埋立など多くの法律に関して、司法の判断はあまりに時代おくれとなっており、当事者適格の範囲の拡大が望まれる。
- 今回の訴訟は、文化財保護法や種の保存法が、開発の抑止力として弱すぎるという所からスタートしている。環境省は、野生生物保護に関して、種の保存法や鳥獣保護法などを含め抜本的な見直しを行い、野生生物保護法制の強化をめざすべきである。