「アユ生息環境比較調査」「クマタカ協議」始まる
会報『自然保護』No.451(2000年11月号)より転載
ご支援、ありがとうございます
熊本・川辺川で計画されているダム建設を巡り議論が高まっている。
川辺川ダムには、利水・治水・漁業・環境と、大きく分けて4点の問題点がある。利水を巡っては裁判が行われており、手続きは妥当だったという判決が出たが、水を押しつけられる農家の方々が控訴を準備している。
一方、漁業はダムができても環境は維持できると説明されてきているが、漁業者の方々は体験的にそんなはずはないと、「川辺川・球磨川を守る漁民有志の会」(吉村勝徳代表)をつくって疑問を投げかけていた。川漁師の経験的な知識を、科学的なデータとして表し、議論の材料にできないか?という要望は、以前から漁協有志や県内の自然観察指導員・県内NGOから寄せられていたが、ようやく専門家や分析協力者の体制が整い、最も重要性・緊急性が高い、アユの生育環境比較に絞ることで実現にこぎつけた。
県内のNACS-J会員17名もサポートチームとして調査に参加してくださり、調査が始まった。すでに上流にダムがある球磨川本流と、ダムのない川辺川(球磨川の支流)で、アユの生息状況と生育環境にどんな違いがあるのかを明らかにしたい。なお、先月号で調査実施にご寄付をお願いしたところ、さっそくたくさんのご寄付が届き始めた。皆さまのご支援に感謝したい。
また、NACS-J会員が中心となって取り組んでいる環境面の問題に、クマタカの生息環境保全がある。川辺川ダムによる、クマタカの生息・繁殖への影響を予測するために、これまでは、事業主体である建設省とNACS-J熊本県クマタカ調査グループが、それぞれ独自に調査を行い、それに基づく主張をしてきたが、地元グループは同じテーブルについて意見交換をする場を求め続けていた。
その提案がようやく実現し、10月4日に、初の意見交換会が建設省川辺川工事事務所で開かれた(左記コラム参照)。川辺川ダム建設を巡って建設省と自然保護団体が調査データや意見交換を行う場を設けるのは、初めてである。川辺川の自然保護にとって実りある場となるよう、また地元会員の皆さんの取り組みに、全国の皆さんのご支援をお願いしたい。
(横山隆一・常務理事)