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東北で緊急避難させた絶滅危惧植物のミズオオバコが可憐な花を咲かせていました。

2014.07.17
活動報告
icon_shimura.jpg  保護・研究部の志村です。
 
7月11〜13日、宮城県に保護・研究部の朱宮と行ってきました。
台風8号が各地で猛威をふるいながら北上していましたが、当日は台風は抜けて好天に恵まれました。
 
今回の調査は、今年4月に行った復興道路建設で危機にあった絶滅危惧植物の緊急移植の経過モニタリング、人と自然のふれあい調査。そして、自然資本というキーワードで沿岸という自然を環境経済の視点から検討するため、慶応大学の大沼あゆみ教授にもご同行いただきました。
 
東日本大震災の被災地では、いよいよ本格的な復興事業が進んできたという風景があちこちで広がっていました。地盤沈下した町全体を10メートルの盛り土でかさ上げする工事や、震災前の三倍ほどの高さで作られる防潮堤などです。
ただし、復興事業では環境アセスメントは行われないので、通常時であれば十分な調査や対処がされるはずの地域の財産である希少種も、その存在が十分把握される前に消えてしまう可能性があります。そして、地域の住民の方々が十分に議論をなされたとは言い難い状況のまま、誰が望んでいるのかよくわからない事業もあります。NACS-Jは、震災後に沿岸の海岸植物群落調査などを実施し、地域の環境をいかした復興をすすめるべきと考え、意見書を提出してきています。
 
 
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▲陸前高田市のかさあげ工事(左の白っぽいものは、土砂を運ぶベルトコンベア)。
 

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▲気仙沼市の野々下海岸に建設中の防潮堤。左の内陸側にはもう少し緩傾斜の部分が背中合わせのようにつくられる。

 
これまでの調査で、震災後にできた湿地に絶滅危惧の植物が芽生えて生育していることもわかりました。しかし、その生育地の一部に復興道路建設や農地整備が行われるため、工事が目前に迫った4月、それらの植物の緊急避難をさせました。
4月といえば東北ではまだ春は遠く、前年に記録した植物たちもまだ泥の中で眠っています。前年の記録を元に“泥”の状態で、近くの集落の湿地に、地元の会員や県内の研究者にご協力いただき移動させました。
また、移植先の湿地の見守り手を増やし、自然を活かした復興の実践として田んぼの復活を働きかけたところ、地元の若者達が立ち上げたNPOが中心になって市民参加の酒米づくりが始まりました。
 
というわけで、今回の調査は、移植後の絶滅危惧種の植物と田んぼのようすを調べることが大きな目的の一つでした。
田んぼには、青々と元気な苗が並んでいました。地元や遠方から作業に参加してくださる皆さんのご尽力で雑草も目立たず、カエルや水生昆虫のマツモムシの仲間が泳ぐ姿も見えました。トンボもたくさん飛び交っています。
 
一方、湿地は、春に移植作業を行った朱宮がため息をつくほどに人の背丈を超すガマが広がっています。こんな中で、絶滅危惧植物たちは無事に生育できているだろうかと、みんなで探してみると…。環境省レッドリストで絶滅危惧II類(VU)のミズオオバコ(下写真)、ミズアオイの姿を無事に見つけることができました。緊急避難は、なんとか成功したようです。
今後も、モニタリングを続けます。
 
▼花を咲かせていたミズオオバコ

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▲左:ミズオオバコの花を見つけてほっとした表情の朱宮。右:手前が復田したたんぼ、奥が移植地。右からNACS-J・朱宮、このプロジェクトにご協力くださっている地権者の阿部さん、慶応大学大沼教授、南三陸町役場平井氏。
  

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▲移植した植物の調査手法について打合せをする宮城大学・神宮司さんと朱宮。
 
 
 
 
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宮城県で最大規模の防潮堤が計画されている砂浜である気仙沼市小泉海岸にも行ってきました。写真は、防潮堤計画についてヒアリングする大沼教授。海には多くのサーファーが訪れていました。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
▼小泉海岸には、防潮堤の大きさを示す印が付けられていました(赤丸の中に印があります)。201407koizumikaigan.jpg

左右をつなぎ、高さの目印に立っている自分の視線まで高さを伸ばすと、断面は下写真の赤い線のような感じでしょうか。中央は天端の幅を表しています。この高さで砂浜の手前から向こうの端まで、さらに右手の川につながり、上流部まで防潮堤は計画されています。
丘の斜面に設置された防潮堤の最大高の目印の位置から撮影しているので、見えている景色ほぼすべてを覆い尽くす規模であることがよくわかりました。



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南三陸町の入谷(いりや)地区では、「人と自然のふれあい調査」を行いました。
「ふれあい調査」は、地域の方々に集まっていただき、なつかしい音や匂いなど五感に記憶されてきたものを挙げていただきながら、人と自然がどんなふうにふれあってきたかを調べ、今後の地域の自然保護に役立てていこうという調査です。
入谷地区は、少し内陸に入った里やま風景が広がる地域で、これまでこの地区で何度かの集まりを行ってきおり、その中で「食」についてのキーワードがたくさん挙がってきていました。
そこで、今回は地域の農業について詳しい武澤かき子さんにスペシャルゲストとして話題提供していただいたところ、集まった皆さんからも「そういえばこんなこともあった」「あのときはこうだった」とたくさんの思い出話をお聞きすることができました。
 

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▲写真はふれあい調査のようすと、今回参加してくださった入谷地区のみなさん。

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