リニア中央新幹線計画がいよいよ動き始めています。
保護・研究部辻村です。
リニア中央新幹線計画について、10月19日に国土交通大臣によって工事実施計画が認可されました。これで環境影響評価の手続きから実際の工事計画が動き始めることになります。
日本自然保護協会は同日、福島みずほ参議院議員事務所の協力を得て、リニア新幹線を考える沿線住民ネットワーク、公共事業改革市民会議との共催で緊急院内集会を開催しました。集会では国土交通省、環境省に対して、大臣意見に真摯に答えていない補正評価書をもって認可に至ったのは日本の環境行政におおきな汚点を残すことになることを指摘しました(緊急声明は、こちらをご覧ください)。
国土交通省は、自ら意見した地下水への影響シミュレーションについて、改善されたという証拠が評価書のどこにも記載されていないにもかかわらず、事業者がしっかりとやったと言っているので問題ないと判断したと回答し、最大で毎秒2トンの減水が予測されている大井川を抱える静岡市の関係者の失笑を買っていました。
今回のJR東海が作成した環境影響評価書については、地下水だけではなく様々な問題があります。大気環境や騒音、振動にかかわる工事車両の通行台数の予測についても、荷物を積載した車両の台数しか予測していません。早川町で11月5日に実施された説明会では、事業者が片道しか考えていないと明言しています。つまり、空の車両の通行量による影響を評価していないことになります。山梨県の早川町や、長野県の大鹿村では、住民にとって必要不可欠な生活道路がトラックで埋め尽くされることになるのですが、その影響評価が過小評価されていることは大問題です。
このようにリニア計画は自然環境への影響は計り知れないものがありますし、生活環境も破壊されることになると思います。それにも関わらず、生活に支障がないよう努力しますとの言葉だけでこの事業が進められているのです。
日本自然保護協会では今後もこうした問題点を明らかにしながら、事業者が環境破壊をいとわない姿勢から、しっかりと自然・社会環境を保全する方向性に転換するよう求めていきます。そして、この事業が完成する予定の2045年(大阪まで)の未来の社会に日本の生物多様性がしっかりと残されるようにしていきたいと考えています。皆様のご支援、ご協力をいただければ幸いです。