第2回日本ユネスコエコパークネットワーク会議実行委員会に参加してきました。
引き続き、保護研究部の朱宮です。
11月27日~28日にかけて石川県白山市の白山国立公園センターにおいて第2回日本ユネスコエコパークネットワーク会議実行委員会が開催されました。NACS-Jは、宮崎県綾町のユネスコエコパーク登録までの支援を行ったこと、赤谷プロジェクトを行っている群馬県みなかみ町がユネスコエコパークに申請するあたり支援を行っていること、私が日本MAB計画委員に所属していることから参加をしました。
▲第2回ユネスコエコパークネットワーク会議の様子。
今回の会議の目的は、現在登録されている7地域と申請予定自治体が各地域の活動を報告するとともに情報交換の場である日本ユネスコエコパークネットワーク(J-BR-net)の運営方法、来年10月に志賀高原で開催予定の東アジア生物圏保存地域ネットワーク(EABRN)会合の開催について意見交換を行うことでした。
地域からの報告については、事前アンケート調査に基づいて報告されました。組織体制、予算、中心的取り組み、課題についてです。ユネスコエコパークへの取り組みについては、各市町村それぞれ準備状況や予算、体制に隔たりがあることがわかりました。
特に只見(福島県)のように過疎高齢化が急速に進み一刻も早く地域振興策を進めたいと考えている地域もあれば、南アルプス(山梨県・長野県・静岡県)のように十市町村からなり体制作りに苦心している地域があったり、屋久島(鹿児島県)、大台ヶ原・大峯山(奈良県・三重県)、白山(富山県・石川県・福井県・岐阜県)は拡張申請を控えているため保全管理計画の策定や申請書作成に主眼が置かれていたりするほか、大分県、みなかみ町(群馬県)、十和田市(青森県)も協議会の立ち上げや申請書作成に活動の重きが置かれていました。綾町(宮崎県)は、すでに登録から2年が経過し、計画策定だけでなく、地域振興や教育活動に主眼が置かれていました。
これらの報告を聞くと各地域によってネットワークに期待するところが大きく異なるため、J-BR-netとしてはすべてのニーズを満たすテーマ設定をすることは難しいし、参加する側からすると求めるものが得られないならくる意味がないということにもなりかねません。
東京大学の田中先生からは、ネットワーク構築にあたっては、次の3つのことを考える必要がある、すなわち、1)会員資格の範囲、2)実施事業をどこまでするのか、2)会費と事務局機能をどうするかという問題提起をしていただきました。
ユネスコエコパークのネットワークは事務局体制や運営に関してまだ決まっていない点が多く、発展途上にあるところが、おもしろいところでもありますが、持続可能な運営という観点からは不安な点でもあります。
それを象徴するのが来年志賀高原で開催予定の東アジア生物圏保存地域ネットワーク(EABRN)の実施です。EABRNは昨年、第13回がモンゴルで開催されました。アジアのMAB関係者が集まることができる貴重な機会を提供しているわけですが、日本は以前に屋久島で開催しただけで、その後開催されていないので、今回開催できると活発化してきた日本のMAB活動に関してアピールの機会にもなります。しかし、文科省からの財政支援が決まっていないこと、事務局は開催地である山ノ内町まかせといったように国際会議であるにもかかわらずホスト国としてあまりにも準備不足であることがわかりました。
今後、ますますユネスコエコパークは増えていくことが予想され、その理念がいろいろな地域で実行されていくことが期待されますが、円滑な運営のためには事務局体制、ネットワークの運営、ミッション、ガイドラインの明確化など課題も多そうです。
▲見学した白峰地区の旧杉原家の巨大な民家。豪雪地帯であり稲作は行われていなかったが、焼き畑、養蚕、狩猟採取などで豊かな生活を送っていた様子がうかがわれた。