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第2回ヤナセ天然スギの今後の取り扱いに関する検討委員会に出席しました。

2015.01.22
活動報告
icon_syumiya.jpg 保護・研究部の朱宮です。
 
 
1月9日(金)に高知の四国森林管理署において第2回ヤナセ天然スギの今後の取り扱いに関する検討委員会に出席しました。
 
11月に第一回目の検討委員会が開催され、ヤナセスギの現状について発表があり、12月2日に和田山にある比較的保存状態のよい天然林と103年生の高齢級人工林(猿押山文化財資源備蓄林)を視察しました。
 
結論から先に述べますと、ヤナセ天然スギはこれまでの過剰な資源利用により危機に瀕しているといえます。したがって、早急に天然林の伐採を中止し、人工林利用に切り替えるべきであると思います。
 
もともとヤナセスギは、四国の中でも安芸、馬路、魚梁瀬、奈半利、野根という高知県の北東部のみに分布し、四国では唯一のスギ天然林です。過去には上記の地域全域にスギが分布していましたが、ほとんど伐り尽くされ、検討委員会の資料によれば林地面積は約1100ha、うち約200haは保護林になっていますが、残りの900haは森林施行林として現在でも利用される状態にあります(ただしここ2年はヘリ集材による採算が見込めないことから伐採が見送られています)。特に胸高直径90cm以上の個体が10本/ha以上の林分は100haとなっており、ヤナセスギとして搬出していた大木の林分はほとんどない状態です。
 
四国森林管理局は、天然杉のような大径木の加工技術の衰退や地元の事業者に配慮し平成30年度からの次期の森林経営計画の見直しから中止をしたい意向のようですが、早急に天然杉の伐採を中止し、現在育成している人工林の利用について検討すべきであると考えます。
今年度中にパブリックコメントが局から出されますのでNACS-Jからも意見を出したいと思います。
 
11月5日にヤナセスギの取り扱いに関する検討委員会がありましたが、12月2日に実際にヤナセスギの現場をみてきました。高知龍馬空港から車で3時間あまり、ゆずのジュースで有名な馬路村にある和田山国有林をみました。今年の夏の台風で林道が途中で崩壊しており、途中からは30分ほど歩いたところに、目的の林小班の入り口がありました。林道を歩く途中にも胸高直径100cm、樹高30mを超えるおよそ300年生と思われるヤナセスギが点在しているのが観察できました。平均斜度45度の急傾斜地が続き、四万十層の崩れやすい地形地質の場所でありながら、年間降雨量は3000mmを超えるとのこと。大きくなってもなお成長を続けているということで、スギの成育適地となっていることがうかがえます。
 
江戸の時代から林業が盛んで、ヤナセスギのブランドで知られる銘木であることから体径木を抜き切りする択伐施業が行われてきたことで、大きな木から亜高木、低木、稚樹、実生とすべての段階のスギの後継樹がみられ独特の林内景観を作っていました。
しかし、ブランドに頼ってしまい過伐により資源が少なくなってきていること、ヘリ集材となるのでコストがかかること、枝打ちなど製品管理がなされなかったことで使える材が個体の樹高の半分以下だけであること(上半分は1万円/m3、下半分は25万円/m3だそうで、ヘリで集材すると運搬コストがかかるため上半分は切り捨てとなる)、などにより伐採木の選木は行われたが昨年は伐採を行わなかったとのことです。
 
最後に2012年に植林された文化財資源備蓄林を見学しました。ヤナセスギが枯渇しつつある中持続的に活用していく高齢級の人工林として期待されています。こうした人工林をヤナセブランドとして持続可能な形で活用できる仕組みをつくる必要があります。
 
 

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▲ヤナセスギの巨木林300年生以上も含む
 

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▲文化財資源備蓄林(約100年生)の林相、本来は神社など伝統建築のために備蓄された人工林。ここをヤナセスギの代わりに持続的に活用できないか検討している。

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