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(仮称)肥薩ウインドファームの環境影響評価準備書に関する意見書を提出しました

2023.06.26
要望・声明

日本自然保護協会(NACS-J)は、熊本県と鹿児島県との県境で計画されている(仮称)肥薩ウィンドファームの環境影響評価準備書に対し、計画エリアが主要なサシバの渡りルート上、クマタカの繁殖地にあたり鳥類のバードストライクのリスクが極めて高いことからなどから、風車設置の再考を求めるよう意見しました。

(仮称)肥薩ウインドファーム 環境影響評価準備書に関する意見書(PDF/708KB)


2023年6月26日

電源開発株式会社 御中

(仮称)肥薩ウインドファーム 環境影響評価準備書に関する意見書

〒104-0033 東京都中央区新川1-16-10 ミトヨビル2F
公益財団法人 日本自然保護協会
理事長 亀山 章

日本自然保護協会は、自然環境と生物多様性の保全の観点から、熊本県水俣市、鹿児島県出水市および伊佐市で計画されている(仮称)肥薩ウインドファーム(事業者:電源開発株式会社、約129,000 kW、基数:30基)の環境影響評価準備書(作成委託事業者:アジア航測株式会社、以下本アセス図書と略記)に関する意見を述べる。

1)サシバの渡りのルートである西側エリアでの風力発電施設設置はやめるべき

本アセス図書の表10.1.4-119によると、春季渡り鳥調査で6例7個体、秋季渡り鳥調査で246例1,332個体のサシバが風力発電施設設置予定地上空を通過しており、特に秋季のサシバの主要な渡りルートの一つとなっていることが示されている。確認されたサシバのうち約14.1%がブレード回転域よりも低空を通過しており、風力発電施設を設置した場合、200個体近いサシバが毎年バードストライクのリスクに晒されることになる。サシバは、温帯~冷温帯地方で繁殖のために大規模な渡りを行う猛禽類であり、各地で生態系の指標種として重要な猛禽類である。そのため、サシバがバードストライクに遭遇することは、風力発電施設設置場所周辺だけでなく、広域にわたって生態系に大きな影響をもたらすことになる。対象事業実施区域のうち西側にサシバの渡りのルートが偏っていることから、同事業の西側エリアではサシバのバードストライクを回避する観点から風力発電施設の設置をおこなうべきではない。

2)クマタカの高利用区域への風力発電施設設置をやめるべき

本アセス図書によると、風力発電施設の設置場所周辺では9ペアのクマタカが確認されており、6ペアの繁殖が確認されている(表10.1.6-11)。そのうち3ペアは風力発電施設への年間衝突確率が最大0.1個体/年以上(風力発電施設が20年間稼働した場合2個体衝突する予測結果)とバードストライクのリスクが高いことが示されている。表10.1.6-68によると、風力発電施設の設置場所を再検討した結果、「本ペアの年間衝突個体数を、最大0.911個体/年(風力発電施設が20年間稼働した場合18~19個体衝突する予測結果)から、最大0.491個体/年(風力発電施設が20年間稼働した場合9~10個体衝突する予測結果)まで低減した。」とあり、準備書段階でクマタカへの影響配慮をおこなっているとしている。しかし、配慮後の当該ペアの衝突確率0.491個体/年は極めて高い確率であり、本事業が実施された場合、当該ペアがバードストライクに遭う恐れが極めて高い。このようなクマタカの生存を脅かす場所での風力発電施設の設置は行うべきではない。

3)希少なラン科植物の生育地を回避して計画をすべき

対象事業実施区域内では、キエビネやエビネなどエビネ属、加えてナゴランやクモランなどの着生ランが多数確認されている(表10.1.5-8)。確認されたラン科植物のうちキリシマエビネとキエビネ、ナゴランは環境省のレッドデータカテゴリーで絶滅危惧ⅠB類に指定されている。特に、キリシマエビネは、本アセス図書作成のための調査で確認された個体の過半数が改変区域内で確認されており、風力発電施設設置による直接的な影響を強く受けることが示されている。
このようなことから、これらエビネ類の生育が多く確認された場所や、移植が困難な希少な着生ランの生育が確認された場所では生育地を回避して計画を再考すべきである。

以上

サシバの写真サシバ(撮影:与名正三氏)

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